第九十五話 大と小その四
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「ここでも都からじゃ」
「道は都からですか」
「うむ。都からは四方八方に向かえるからのう」
「都を制した意味はそういう意味でも大きいですな」
「国を守るという意味でもな」
「道ですか」
「そうじゃ。幾ら兵が多くとも動かさねば意味がない」
こうも言う信長だった。
「充分に動けなければな」
「その為の道ですか」
「それにじゃ。道があれば人はそれで行き来する」
戦のことだけではなかった。信長が道を見る理由は。
「商いも盛んになるのう」
「確かに。それは」
「それでじゃ。是非共じゃ」
道を敷くというのだ。領内のあらゆる場所に。
「まずは道じゃ。道を敷くぞ」
「無論この岐阜から都への道も」
「よりよくする」
ただだ、道があればそれでいいというのではなかった。
「そうするぞ」
「畏まりました。では何かあれば」
「すぐに都に行ける様になる」
一旦急があってもだというのだ。
「都にな」
「ううむ。これまで都はいささか遠うございましたが」
「幾分か短くなる」
道がよくなり移動が楽になるからだ。
「そうなるぞ」
「ではその時は」
「うむ、とにかく手は打っていく」
政においてもそうするというのだ。
「それがひいては国をよくするのだからな」
「その為にですな」
「そうじゃ。しかしのう」
ここでまた言う信長だった。
「やることは多いわ」
「確かに。それは」
「当然御主にも働いてもらう」
坂井にもだ。そうしてもらうというのだ。
「よいな。それで」
「はい、わかっています」
「ならよい。では全員で働いてもらおう」
こう話してだ。実際にだった。
信長は大掛かりな政に入った。これまで己の国とした全ての国に対してそれを行いはじめた。
その中で政にあたりそその中でだ。矢部がこう万見に述べた。彼等は近江まで出てそこの開墾にあたっている。整えられていく灌漑を監督しながらだった。
「こうして田畑の開墾もじゃ」
「殿はお好きじゃな」
「うむ。田畑に町を整える」
信長はどちらもしているのだ。
「殿は実にお好きじゃな」
「そうじゃな。どうやらな」
「うむ。それでじゃが」
また言う矢部だった。
「都のことじゃが」
「都は勘十郎様が赴かれてるな」
「それに村井殿もじゃ」
織田家でも指折りの政の者が都に入っているというのだ。
そしてそのうえでだ。村井が何をしているかということも話されるのだった。
「あの方も入られておるぞ」
「吉兵衛殿がか」
「そうじゃ。荒れた都を整えられるというのじゃ」
応仁の乱で戦場となってから都は放っておかれたままだ。右京も左京も荒れ放題なのだ。もっともこの頃には次第に上京と下京といった感じになっていたが。
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