第九十五話 大と小その三
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「今よりさらに確かな道をな。ついでに都から丹後まで川の堤もしっかりとしておく」
「堤もですか」
「無論じゃ。治水なくして田畑は整えられぬ」
まず水をどうするか。そこからだというのだ。
「そこからじゃ」
「では丹後だけではありませんな」
「丹波や若狭も同じじゃ」
この二国もだというのだ。道も堤も整えるというのだ。
「若狭も。あの国は朝倉への備えになるからのう」
「朝倉ですか。あの家は」
「この度は見ているだけであったな」
「全く動きがありませんでした」
「動く気がなかったのであろう」
だから動かなかったというのだ。この度は。
「朝倉義景はな」
「あの御仁は相変わらずですか」
「動かぬ。宗滴殿はどう考えておるかわからぬが」
信長はこの老将、まだ健在であるこの人物のことも話に出した。
「まあ歯痒く思っておるであろうな」
「義景殿が動かれなかったことは」
「本来なら動いてじゃ」
信長ならそうするとだ。彼は自分から言ってみせた。
「若狭を手に入れるなりじゃ」
「そうしていましたか」
「それか織田家につくかじゃが。これはないな」
「はい、朝倉家に限っては」
坂井も織田家の家臣だ。それならだった。
織田家と朝倉家のことはわかっていた。両家の間柄は険悪なままなのだ。
共にかつては斯波家に仕えていた。だがそれが余計にだった。
「向こうにとってみれば織田家は」
「所詮は成り上がり者だからのう」
「向こうは直臣出身ですな」
「それに対して織田家は元は神主じゃ」
織田家は元々は越前の神主の家だったのだ。そこからはじまっている。このことから朝倉家が織田家を見下す彼等なりの事情があったのだ。
「その織田家の風上につくなぞな」
「間違ってもできませぬな」
「朝倉家はな」
この家だけはだ。絶対にだというのだ。
「できる筈がない」
「ではやはりですか」
「あの家だけは織田家の風下にはつかぬ」
絶対にだというのだ。それは。
「何があろうともな」
「ではその朝倉家に対しても」
「一応備えに道を敷き兵も置くがじゃ」
「あまり警戒せずともよいですか」
「放っておいてもあ奴は動かぬ」
朝倉義景はだ。絶対にだというのだ。
「まあ幾らか兵を置くだけで十分じゃな」
「若狭はですか」
「今はな。そしてじゃ」
「そしてとは」
「丹後や若狭よりも播磨じゃ」
この国が重要だというのだ。赤穂や姫路のある国がだ。
「あの国は豊かじゃし広い」
「それだけにですか」
「治めなくてはならんし守らなくてはならん」
「ではここは」
「兵は丹後や若狭よりも多く置きじゃ」
「そして道もですか」
「播磨の西にすぐに行ける様に整える」
信長は言っていく。しかもだった。
「播磨の西に
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