第九十五話 大と小その二
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「ですから」
「左様か。もうわかっておったか」
「勘で」
「鋭いのう。見事な勘じゃ」
「間違いではありませんね」
「その通りじゃ。義父上の墓に参るぞ」
信長は部屋の襖のところにいる。また青い具足と陣羽織を着たままだ。
そのうえで襖のところに立って中に座っている帰蝶に言うのだった。
「今からな」
「はい、それでは」
帰蝶も微笑んで応えそのうえでだった。
二人で城を出て稲葉山の中にある小さな墓の前に来た。そうしてだった。
信長はその墓の前に帰蝶が持っていた花を置いた。そのうえで言うのだった。
「後で父上の墓にも参るが」
「まずはですか」
「わしは義父上にも父上にも認めてもらった」
認めてもらった、それ故にだというのだ。
「だからじゃ。一応身を立てたならばのう」
「こうしてお墓参りをされるというのですね」
「うむ。上洛を果たした時に決めた」
「都に入られてからですか」
「一つの区切りだと思ったからのう」
「だからこそ今こうして」
「左様じゃ。まことに一つの区切りじゃ」
信長は満足していた。慢心はなかったが。
そしてその満足のままだ。帰蝶に言うのだった。
「ではこれからは度々じゃ」
「父上のお墓に参って頂けますか」
「そうしたい」
帰蝶にまた述べた。
「是非な」
「有り難うございます」
帰蝶はついだった。無意識のうちにだった。
また頭を下げる。そうしてこう言うのだった。
「父上も喜ばれます」
「だから言っておるではないか。礼を言う必要はない」
「しかしです。それは」
「いや、それを言うならわしもじゃ」
「殿もですか」
「そうじゃ。わしも御主がおらればとてもじゃ」
一連の戦の結果、何よりもだった。
岐阜に辿り着けることもだ。それもできなかったというのだ。
「できなかったわ」
「そう言って頂けますか」
「何度でも言う。ではじゃ」
「はい、これからも」
二人は道三の墓参りを行った。信長にとっては久方ぶりの帰蝶との一時でもあった。その一時を過ごした彼が岐阜城に戻るとすぐにだった。
政の話になった。まずはだった。
「ふむ。丹後か」
「はい、あの国はどうされますか」
「山名との境じゃ。しかしじゃ」
申し出てきた坂井にだ。信長は考える顔になり答えた。
「山名は近いうちに崩れるな」
「尼子共々ですか」
「尼子はもたぬ」
出雲にいるがその居城である富田城を攻められて久しい。それならば最早だというのだ。
「そして尼子の次はじゃ」
「毛利は山名を狙いますか」
「毛利はあくまで山陽と山陰しか攻めぬ様じゃが」
だがそれでもだというのだ。
「山名は狙われるじゃろうな」
「では丹後には」
「備えの兵は置く」
このことは絶対にだと
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