第九十四話 尾張の味その四
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「味が薄いですな」
「素材を活かしているといいますが」
「魚も川のもの以外は鱧か貝しかありませぬし」
「味噌も白く甘いです」
「飯も軽い感じに思えます」
「そうであろう。わし等の口には合わぬ」
都の料理はだ。どうしてもだというのだ。
「そういうことじゃ。わしに合うのはやはり尾張の味じゃ」
「だからこそあえて尾張の味を選ばれますか」
「都の味よりも」
「そういうことじゃ。しかし味噌はよいのう」
信長は無類の味噌好きだ。食事の度に口にする程だ。
そしてその味噌についてだ。こう家臣達に話すのだった。
「民百姓が誰でもじゃ」
「味噌を食える様にされますか」
「そうされますか」
「うむ、味噌は素材自体は豆に麦じゃからな」
大豆等だ。そうしたものから作るからだというのだ。
「豆を作らせると共にじゃ。味噌も作らせよう」
「ではこれからは誰もが味噌を食えるのですか」
「そうした様になりますか」
「これまでは味噌といえば贅沢なものでしたが」
「それが変わりますか」
「味噌だけではない」
まだあるのだった。信長が言うことは。
「醤油に酒に茶もじゃ」
「そして紙もですな」
「あらゆるものを作らせてそのうえで」
「世に広められますか」
「蜜柑や梅もよかろう」
特にだった。蜜柑のところで笑みになる信長だった。
「甘いものも大いに作らせようぞ」
「ははは、殿は甘いものがお好きですからな」
「だからこそですな」
「蜜柑もまたですか」
「大いに作らせますか」
「そうするぞ。その国それぞれで作らせることにする」
こうした政も考えているのだった。信長の政はただ開墾をして堤や橋を築き町を整え道を敷くだけではないのだ。楽市楽座や検地も一環でしかない。
あらゆるものを作らせるのも考えていた。そしてそういったことがひいてはだった。
「国を富ますからのう」
「色々なものを作らせることもまた、ですか」
「国を富ませる」
「そうなりますか」
「その通りじゃ。まあこういった政の話はこれ位にしてじゃ」
味噌からはじまったあらゆるものを作らせる話はだった。
しかし政はこういったものだけではない。信長は彼がこれから向かう政の話もするのだった。
「公方様の御前に赴くか」
「そうですな。では我等も」
「礼装に着替えまする」
「そしてそのうえで」
「公方様の御前に」
「さて、公方様はじゃ」
義昭はどうかとだ。信長は今度はこう言うのだった。
「わしにどう仰ってくるかのう」
「おそらくですが」
今回も林が出て来て信長に言ってきた。
「あの方は今かなり気持ちがうわずっておられるので」
「では色々と仰ってくるか」
「そうされてくるかと」
「そうか。やはりな」
林の言葉を聞いて信長は
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