第九十三話 朝廷への参内その十二
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
「何もないではありませんか」
「しかしまだ持っているものがあります」
山科は真面目な顔で述べる。
「幕府の威光です。まだ僅かにあります」
「そしてその僅かな威光を使うというのですか」
「織田家と揉めた場合は」
「その威光を見て大義名分とする家が出たならば」
それならばだというのだ。
「織田家に対することができるでしょう」
「ううむ、そうなのですか」
「幕府にもまだ威光がありますか」
「そして織田家に対することができますか」
「あの有様でもまだ」
「全ては義昭殿次第ですが」
だがそれでもだ。義昭が何かしようとすればだというのだ。
山科はその場合のことを語る。だが、だった。
彼は毅然としてだ。こう結論付けるのだった。
「ですが帝のお考えは決まりました」
「うむ、織田家が天下を定めるべきじゃ」
「ならば我等もです。織田殿を見ましょう」
見る、それが即ちだった。
こうした話が信長が去った後の朝廷で為された。都においては織田家や幕府だけではなかった。
朝廷もあり朝廷は朝廷で考えていた。そうした複雑な、麻糸の如く絡み合った政がそこにあった。
第九十三話 完
2012・5・29
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ