第九十三話 朝廷への参内その十
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「よい塩があります故」
「塩か」
「左様でございます。赤穂辺りでよい塩を多く採れるかと」
「ふむ。塩は大事じゃ」
生きる為に欠かせない。塩と水がなければ城に篭もることもできない。だからこそ信長は塩と聞いて考える顔になったのである。
それでだ。信長がこう言ったのだった。
「猿を置くかはまだ先じゃが」
「塩ですか」
「それはですか」
「うむ、前向きに考えておくとしよう」
塩についての言葉だった。
「それもよくな」
「そして他の国のものもですか」
「どんどん作らせますか」
「酒に酢に茶とな」
信長はそれぞれの国で作らせるものを挙げていく。
「紙に油じゃ。そうしたものをどんどん作らせ売らせ」
「商いの動きをよくしますか」
「そうされますか」
「こう考えておる」
信長のこれまでの政をだ。これまで手に入れた国全てでするというのだ。
そしてさらにだとだ。信長は述べていく。
「後はじゃ」
「はい、道をですな」
「つなげるのですな」
「主な川には堤を設け橋をかける」
そうして田畑や人を守り往来をよくしていきというのだ。
「新田もどんどん作らせる」
「それと共に検地も行い」
「国人も取り込まれますか」
「どの者も織田家の家臣じゃ」
だからだというのだ。
「組み込んでいくまでじゃ。そしてじゃ」
「寺からも荘園をですか」
「それもまた」
「いらぬであろう」
信長はこの時天台宗を念頭に置いていた。比叡山を。この宗派の持っている荘園は実に多くそこから手に入れる力もかなりのものなのだ。
それ故にだ。信長は彼等のことも言うのだった。
「僧には檀家を置くからのう」
「そしてそこからの布施で、ですな」
「生きてもらいますか」
「僧は武ではない」
僧兵も否定する信長だった。
「それならばじゃ」
「しかし殿」
利休が言ってきた。
「天台宗の力は」
「かなりのものじゃな」
「左様です。それに権威もまた」
「いや、わしは権威はじゃ」
「恐れぬというのですな」
「阻むものなら破るまでじゃ」
信長の目が一瞬だが確かに鋭いものになった。そのうえで光を放っていた。その光もまた実に強いものだった。信長のそれらしいものである。
その光を放ちながらだ。彼は利休にさらに言った。
「比叡山は都の北東にあるな」
「左様です」
「そして高野山は南東じゃな」
同時に高野山についても言う。
「密教の二つの山がそれぞれ北東と南東にあるがじゃ」
「鬼門と裏鬼門ですな」
「鬼はそこから出入りする」
所謂風水やそうしたことについても知識がある。信長の見識は広い。
「そして都、即ち本朝の心臓に鬼が出入りするのを防ぐ為にこの二つの山がある」
「その通りかと」
「弘法大師も伝
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