第九十三話 朝廷への参内その九
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「それじゃな」
「しかも智略は武田の軍師山本勘助も唸る程です」
「尚且つ忠義の塊だそうじゃな」
「しかも若いながら人を惹き付けるものがあり」
武勇と智略だけではなかった。そこに加えて心もあるというのだ。
「家臣に十人の強者を従えているとか」
「確か十勇士か」
「そう言ったかと」
「そこまでの者が武田におるか」
「ですから。かなり手強いかと」
これが竹中の出した結論だった。
「武田につきましては」
「武田に上杉じゃな」
信長が主に挙げる敵はこの二つだった。
「北条や毛利も気になるがのう」
「どちらも関東、中国に留まるかと」
竹中は彼等の動きも読んでいた。この二つの家は上洛やそうしたことは考えないというのだ。そこが武田とはまた違うというのである。
「ですからこれといって」
「攻めてくるということはないか」
「しかも北条は遠いです」
関東、小田原にいる。駿河よりもまだ向こうだ。
「今すぐにことを構えることは考えられませぬ」
「毛利はどう見る」
「我等は播磨を手に入れました。それならば」
「国境を接するな」
「それで揉めることも予想されますが」
だがそれでもだというのだ。
「あちらからこれといって攻めてくることはありますまい」
「備えはしておいてもか」
「はい、武田程ではないかと」
それで済むというのだ。
そしてここで小寺が言ってきた。ただし彼は国ではなく人のことを言うのだった。
「ですが毛利についている宇喜多家ですが」
「宇喜多。備前のか」
「はい、宇喜多直家といいます」
「知っておる。悪事の限りを尽くしておるな」
「毛利家でも信用されておりませぬ」
そうした者だというのだ。その宇喜多直家という男は。
「何時何時寝首を掻いてくるかわかったものではありませぬ」
「あの者は何人手にかけておるかのう」
「わかりませぬ」
そこまでだというのだ。宇喜多は。
「あまりにも普通にそうしております故」
「謀が得意か」
「だから。用心は必要かと」
「播磨には頭のいい者を置くか」
言いながらだ。信長は羽柴を見た。そのうえでこう言うのだった。
「あの者でもな」
「羽柴殿をですか」
「播磨に置かれるのですか」
「考えておこう。猿よ」
「あっ、はい」
朝廷、しかも帝の御前に出られたことに浮かれていた羽柴は信長の言葉にもやけににこにことして返してきた。まるで天にも昇らんばかりだ。
その羽柴にだ。信長は言うのだった。
「御主には播磨に行ってもらうかも知れん」
「何と、播磨ですか」
「まだわからんがな。宇喜多が来れば厄介じゃ」
信長は羽柴にも彼のことを話した。
「だからじゃ」
「それがしが播磨に」
「宇喜多への備えじゃ」
それで置くということ
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