第九十三話 朝廷への参内その四
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「あそこはのう」
「?朝廷には一体何が」
「幕府のことじゃ」
ここで言うのは鎌倉幕府では当然ない。室町幕府、今の幕府のことだ。
言うまでもなくこの幕府は都にある。信長はそのことから話したのである。
「都にあり朝廷と常に会ってきたが」
「そして公卿の方々とも」
「そうですな」
「そうじゃ。そしてそれによってじゃ」
武家よりも公家に近くなったというのだ。つまり都の文化に染まり過ぎたというのだ。信長は過ぎたことを時と場合によっては好まない。そして今はその時と場合なのだ。
だからこそだ。信長は言うのだった。
「朝廷との政も妙になったわ」
「そしてそれが問題ですか」
「政としては」
「都は大事じゃが怖い場所じゃな」
そうした場所だというのだ。
「公卿の世は陰謀も多い」
「そしてその陰謀に巻き込まれ」
「毒に巻き込まれますか」
「左様、公卿の世界の毒じゃ」
それが厄介だというのだ。
「だから都は大事じゃが中に入って政をするのは危ういな」
「そうですな。織田家としては」
「それはすべきではありませんな」
「また考えておこう。じゃが」
ふとだ。信長は林兄弟にその思い付きを述べたのだった。
「一つ面白いものがあったな」
「都、朝廷との政についてですか」
「それについてですな」
「そうじゃ。六波羅じゃ」
思い付いた、そうはいってもだ。
ここでのそれは過去のことからだった。信長はそこから思い付いたのである。
「六波羅探題じゃ」
「あの鎌倉幕府のあれですか」
「都からあえて離して置いた」
「それを置かれるというのですか」
「都への政には」
「そう考えておる。どうも都に入るよりもじゃ」
信長は言っていく。
「少し離れて見ておいた方がよいと思うがのう」
「ふむ」
ここまで聞いてだ。林は考える顔になった。
そしてそれからだ。こう信長に述べたのだった。
「中にいるより少し距離を置いた方が物事はよく見えますな」
「そういうことじゃ。それを考えると鎌倉幕府も考えたわ」
「はい、それでは」
「考えておくとしよう。さて」
こうした話を歩きながら進んでいきだ。遂にだった。
御所の奥に来た。その前には女官達がいた。左右の襖に一人ずつ控えている。
見ればその服も十二単ではない。宮中の身なりにしてはみすぼらしい。信長はそのみすぼらしい身なりも見てだ。信長は内心思った。だが、だった。
彼はこのことにもあえて言わずだ。それからだった。
女官達の言葉を受けた。彼女達はそれぞれ言ったのである。
「織田信長様ですね」
「そして家臣の方々ですね」
「そうじゃ」
その通りだとだ。信長も答える。
「わしが織田信長じゃ」
「わかりました。それでは」
「どうぞお入り下さ
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