第九十二話 凱旋の後その二
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「明智殿達にもです」
「しかし。褒美を与えればじゃ」
「それですな」
森と丹羽は首を捻りながら柴田に言葉を返す。
「公方様がどう思われるか」
「そのことが厄介だが」
「おっと、そうじゃったな
言われてだ。柴田もそのことを思い出したのだった。
そしてそのうえでだ。首を捻りながら二人に述べたのだった。
「あの公方様は。どうものう」
「兄君の義輝様とは全く違うな」
「かなりややこしい方に思えるが」
「うむ、わしもそう思う」
言い出した柴田にしてもだ。義昭はそう見ているのである。
「あの方はどうもじゃ」
「何かと根に持ち企まれる方じゃな」
森は義昭を一言でこう評した。
「そうした意味で危うい方じゃ」
「そうじゃな。では論功をされれば」
「それをどう思われるか」
「厄介なことになりかねぬ」
それが問題だった。
「一歩間違えるとな」
「そうでなくとも論功は難しいものですな」
丹羽がここでこう述べた。
「贔屓と思われることもありますし」
「うむ、人には嫉妬がある」
柴田も言う。
「それがかなり厄介じゃ」
「権六殿にも嫉妬はありますか」
「わしにもか」
「はい、それはあるでしょうか」
丹羽はふとだ。合法磊落な柴田にもそうした感情はあるのかと思った。そのうえでの問いだった。
「それがしが見たところどうも」
「ないというのじゃな」
「そうではないのですか」
「やはりわしにもあるぞ」
柴田は真面目な顔で丹羽に返した。
「そうした心はな」
「あるのですか」
「うむ、これで結構他の者を妬む」
己のことを反省しながらの言葉だった。
「それはのう」
「左様ですか」
「例えば御主じゃ」
柴田は丹羽にだ。そのまま言葉を返してみせた。
「五郎左、御主を妬むこともあるぞ」
「いえ、それがしは権六殿程強くはありませぬが」
「違う。御主は何でもできるではないか」
「それでなのですか」
「わしはどうも政が苦手じゃ」
自分では苦笑いをしてこう言うがそれでもだ。実は柴田はそうした政もできる方である。そうしたことも決して不得手ではなくそつなくこなせる。
だが丹羽と比べるとどうかというのだ。
「御主は政もできるではないか」
「そう思われますか」
「わしよりはずっとな。わしはどうもな」
「政はですか」
「戦は自信があるがじゃ」
それでもだ。政に対する自信はだというのだ。
「駄目じゃな」
「左様ですか」
「だから御主なり新五郎殿なりを妬むぞ」
柴田は微笑んで丹羽に話した。
「わしとて妬みはあるのじゃ」
「左様ですか」
「そうじゃ。そういうことじゃ」
「ううむ、意外ですな」
柴田のそうした言葉を聞いてだ。丹羽はというと。
今一つぴんとこない
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