第九十一話 千利休その二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「その言葉に」
「ありませぬ」
「若しあればその時は」
「わかった。ではじゃ」
ここまで聞いてだ。信長も頷いた。そのうえでだ。
二人にだ。自分からこう言った。
「顔をあげい」
「はっ、それでは」
「そうさせてもらいます」
「これから宜しく頼むぞ」
鷹揚な笑みでの言葉だった。
「織田家の力になってもらう。そしてじゃ」
「そして、ですか」
「それでは」
「茶を用意しておる」
信長は今度は利休を見ながら述べた。
「早速飲もうぞ。してそこの者」
「はい」
信長はここではあえて名前を呼ばなかった。そのうえでの言葉だった。
そして彼もだ。それに応えたのだ。
「名を何という」
「千利休と申します」
この名前をだ。彼は名乗った。
「前は千宗易といいましたが」
「格を上げたな」
「そうして頂きました」
「帝がそうされたと聞くが」
「その通りでございます」
「左様か。では千利休よ」
あらためてだ。信長は利休に言った。
「茶はどうじゃ」
「喜んで」
利休は言葉は少ない。しかしだ。
その目の光は強く表情には賢者の趣がある。そしてだ。
その気はかなりのものだった。信長を前にしても何らひけは取らない。そしてその気を発しながらそのうえでだ。信長に応えているのだった。
その彼がだ。信長に応えて言う言葉は。
「ではそれがしもまた」
「茶を共に飲むか」
「そうさせてもらいます」
「では皆の者、場所を変えるぞ」
信長は利休だけでなく今井や津田、そして己の家臣達にも述べた。
「然るべき場で茶を楽しむぞ」
「畏まりました。それでは」
「今より」
家臣達も応えてだ。そのうえでだ。
荒木が設けた茶の場、陣中だがその趣きが置かれた場に入った。その場を見てだ。利休は信長に対してだ。まずはこう言ったのだった。
「宜しいでしょうか」
「どうしたのじゃ?」
「この場ですが」
「どうだというのじゃ?この場は」
「お見事です」
口元だけで微かに笑ってだ。利休は信長に述べた。
「ここには茶の道があります」
「ほう、それがあるか」
「しかもです」
茶の道、それに加えてだというのだ。
「ここには詫び寂びがあります」
「それがあるか」
「あります。そしてこの場を設けられたのは」
荒木を見た。すぐにだ。
そして彼は荒木を見つつ信長にだ。こう言ったのだった。
「荒木村重殿ですな」
「ほう、わかるのか」
「茶の道がありしかも詫び寂びがある」
その二つもある。そこからわかるというのだ。
「これだけのことができるのは松永久秀殿か」
松永もいるがだ。彼ではないとも言うのだった。
「荒木殿しかおられませぬ」
「して何故その者だと思う」
「松永殿には松永殿の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ