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戦国異伝
第九十一話 千利休その一
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                  第九十一話  千利休
 利休達を迎える茶会の用意にだ。荒木は動いていた。
 彼はあまり動かない。だがだった。
 その指示は的確でだ。足軽達、茶を知らぬ彼等をよく動かしていた。
 その彼の指示を見てだ。信長はこう言った。
「やはりな。あの者もじゃ」
「優れた者だと」
「そう仰るのですな」
「はじめて見てわかったわ。あの者もまたかなりの者じゃ」
 信長は確かな笑みで毛利と服部に答える。
「織田家において大きな者となるぞ」
「では。猿や久助殿の様にですか」
「大きくなりますか」
「うむ。そうなる」
 こう二人に話す。
「これはほんの小手調べじゃ」
「それにしては随分と大きな仕事ですが」
「利休殿を迎える為の用意とは」
 ただ招いただけではないというのだ。その迎える者が問題なのだ。
 相手は千利休だ。茶の道にかけて右に出る者はいない。それ故に毛利も服部もだ。この仕事は小手調べにしてはあまりにも大きな仕事だというのだ。
 しかしだ。それでも信長は言うのだった。
「あ奴の持っておるものならばこの仕事もじゃ」
「大したことがないと」
「そう仰いますか」
「そうじゃ。大したことはない」
 こう二人に言う。
「まああれじゃ。あ奴もここからじゃ」
「ですか。そしてですか」
「この仕事の後で」
「千利休じゃな」
 信長は明らかに期待する顔だった。その期待を向けている対象もわかっていた。
 それでだ。彼はまた言った。
「さて、どういった者かのう」
「噂ではかなりの賢人だとか」
「まさに茶のことなら何から何まで知っているとか」
「わしはこの世の天下を目指しておるがあの者は茶の天下を目指しておる」
「では殿ともですか」
「比肩し得る者ですか」
「天下を目指すのは同じじゃ」
 この世と茶、その違いはあれどだというのだ。
「だからこそじゃ」
「御会いしたいですか。利休殿と」
「あえて」
「一度会いたいと思っておった」
「そしてその願いがですか」
「今適いますか」
「うむ、適う」
 だからこそだ。信長も微笑んでいた。そしてだった。
 そうした話をしながらだ。彼は荒木の仕事振りを見ていた。荒木は一人で仕切ってみせていた。
 その指示で足軽達は的確に動く。何の狂いもない。
 そして仕事は進みだ。みるみるうちに終わった、
 全て終わらせてからだ。荒木は信長の前に来てこう言った。
「只今終わりました」
「見せてもらった。見事じゃ」
「ではこれで宜しいでしょうか」
「よい。では後はじゃ」
「利休殿達を待つだけかと」
「さて、では会うとしよう」
 信長は泰然として利休を待った。そうしてだ。
 少し待っているとだ。彼等が来たのだった。
 今井に津田
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