第九十話 堺衆その十一
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そのことを踏まえてからだ。信長はあらためて言った。
「ここにいる面子で利休を見ようぞ」
「ではそのうえで」
「我等は」
「うむ、茶の用意をせよ。その手配は」
荒木を見た。そのうえで彼に告げた。
「御主がせよ」
「それがしがですか」
「うむ、御主のことは聞いておる」
「しかしそれがしは」
「新参者だというのじゃな」
「ですからそれは」
「新参だからこそじゃ」
信長もだ。確かな笑みで荒木に返す。
「それ故にじゃ」
「この度の利休殿の茶の用意を」
「してみよ。そして見事仕切ってみせよ」
「では。お言葉に応えまして」
「わしはこれでも人を見る目はあるつもりじゃ」
信長は己の人を見る目には確かな信頼があった。そしてそれ故になのだ。
「だからじゃ。よいな」
「有り難きお言葉」
「さて。これでこちらで茶を仕切る者は決まった」
荒木、彼にだというのだ。
「後はその利休が来るのを待つだけじゃな」
「では。それまでの間ですが」
信行がまた信長の傍らから言ってくる。
「暫しの間休息としましょう」
「休みか」
「はい、そうしては如何でしょうか」
「そうじゃな。摂津から入ってあまり休んでおらぬ」
そのうえでこの堺の傍まで来たのだ。そのことも考慮してだった。
「では。少しな」
「はい、休みましょう」
「弓も常に張っておっては使えぬ」
だからだと言うのだった。信長もだ。
「では。休もうぞ」
「はい、それでは」
「見張りの者を置いて休め」
そのうえでだというのだ。
「よいな。わしも休む」
「陣はそれがしが引き受けます」
「いやいや勘十郎、御主もじゃ」
しかしだった。ここでだった。
信長はこう信行に言った。彼のすぐ下の弟にだ。
「御主も休め」
「それがしもですか」
「うむ。ここはそうじゃな」
家臣達を見る。そしてその中でだ。森と池田を見て二人に告げた。
「御主達二人に任せる」
「畏まりました。では」
「それがし達が」
こうしてだ。森と池田が陣の留守を預かることになった。信長の信任厚い二人がだ。
このことが決まってからだ。信長は本陣から己の場に戻った。そこには信行も共にいた。
信長はその信行にだ。具足を脱いだ状態で問うた。信行も同じく具足を脱いで楽にしているがやはりその姿勢は畏まったものだ。
その畏まっている信行にだ。彼は言った。
「利休のこともあるがじゃ」
「何か」
「うむ、本願寺についてどう思うか」
ここでもだ。信長はこの寺のことを気にしていたのだった。
「あの寺は」
「本願寺ですか。やはり」
「気をつけねばならんな」
「一向宗は敵に回すと厄介なことこのうえないかと」
信行はこう兄に話す。
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