第九十話 堺衆その八
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「是非共です」
「では。今より」
こう話してだ。六人は茶室を出てだった。
今井と津田が堺の町衆達に話をした。そのことを聞いてだ。
堺の居並ぶ商人達は待っていた今井の屋敷の広間でだ。口々に驚いてこう言い合った。
「まさか。織田家につくのですか」
「三好家にこのままつくのではなく」
「織田家に代えられるのですか」
「その仕える先を」
「そうじゃ。そうすることにした」
「あちらとお話をしたうえでな」
まさにそうしたとだ。今井と津田も答える。その場には利休もいる。彼等は共にいながらそのうえでだ。同じ堺の町衆達に対して話しているのだ。
「織田家につく」
「堺はこれからのう」
「ううむ、そうされますか」
「意外と言えば意外ですな」
「長い間付き合いのある三好家から織田家に代えられますか」
「これからは」
彼等はまだ信じられない感じだった。しかしだ。
今井と津田は堺の顔役である。利休も然りだ。この彼等がいいと言えば堺で通らないことはない。それは今回のことも同じだった。
町衆の者達も顔を見合わせたうえでそれからだ。こう言った。
「では、わかりました」
「ここはお二人、そして利休殿にお任せします」
「そうさせてもらいます」
「そうしてくれるか。それではじゃ」
「これからじゃが」
町衆の者達が納得したのを見てだ。それからだった。
二人はすぐにだ。その町衆達に述べた。
「我等は信長様の本陣に向かう」
「そこで詳しいことを話す」
「そしてです」
この場でははじめてだ。利休が口を開いてきた。
「私は信長様に茶を淹れさせてもらいます」
「あの織田信長公にですか」
「そうされますか」
「はい、そして茶を見て頂きます」
そうするとだ。利休は毅然として述べた。
「ですから今よりです」
「利休殿の茶をあの尾張の暴れ者に」
「そうされますか」
流石に最早信長をうつけとは言わなかった。うつけが尾張からここまで勢力を一気に拡げられることは不可能だからだ。
だから彼等も信長をうつけとは言わなかった。しかしだった。
「織田信長といえばすぐに刀を抜くと評判ですぞ」
「とかく血の気が多いとか」
「自ら刀を抜き狼藉をしようとした小物を切り捨てたとか」
「他にも色々と聞いていますか」
「いえ、おそらくはですが」
口々に言う町衆達にだ。利休はやはり堂々として、かつ落ち着いた気品で述べた。
「信長様はそうした方ではありませぬ」
「暴れ者ではありませぬか」
「そうではないですか」
「はい、若し私の目に狂いがなければ」
このことには自信があった。利休にも。
「あの方は稀代の傑物です」
「確かに。傑物でなければとても」
「ここまでは至れませぬか」
「左様です。そして礼儀もです
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