第九十話 堺衆その三
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「その証がわしじゃ」
「確かに。松永殿さえ用いられるなら」
「それがし達も」
「そしてです」
松永が話したタイミングを見てだ。羽柴はすぐに出た、
彼はだ。こう今井と津田に話した。
「殿は堺にこれまで通りの商いを認められるとのことです」
「それは有り難いのう」
「そうじゃのう」
今井と津田は羽柴の言葉を聞いて顔を見合わせる。
そのうえでだ。こう言ったのだった。
「条件としては悪くないのう」
「むしろいいものじゃな」
「しかし銭を寄越せと言われるやもな」
「それがあれば同じじゃ」
「それですが」
銭のこともだ。羽柴はすぐに答えた。
「税は納めてもらい奉行は置かせてもらいますが」
「それでは三好様と同じじゃな」
「そうじゃな」
「三好様の時はこの御仁がおられた」
「その時には色々あったのう」
二人は他ならぬ松永自身を見てその時のことを思い浮かべながら話した。
「全く。何かあれば銭じゃった」
「色々と搾られたわ」
松永は今は己の場所に座り平然と笑っている。二人の話は耳に入っているがそれでもだ。彼は平然とした態度でそこに座っているのだ。
その彼を見ながらだ。二人はさらに話す。
「その時と同じならな」
「やはり三好様の方がいいのではないのか?」
「いえ、三好がここにいた時の税はわかっています」
また言う羽柴だった。
「中々重いものですな」
「しかし織田家も同じではないですかな」
「やはり搾り取られるおつもりですな」
「いえ、その税の半分です」
三好の税と比べてだ。それだけにするというのだ。
「殿はそれだけにすると仰っています」
「何と、三好様の半分」
「それだけの税でよいのですか」
「まさかとは思いますが」
「そのお言葉は」
「殿は中の政においては嘘を言うことはありませぬ」
それはだ。決してだというのだ。
「それはありませぬ故」
ではやはり」
「税を半分にして下さるのですか」
「左様です。そして町の道に港ですが」
そうしたものもだ。どうするかというのだ。
「織田家が自分達の銭で整えられますので」
「その様なことまで為されるのですか」
「織田家は」
「はい、そうします」
確かな声でだ。羽柴は二人に答えた。
「全ては堺の民達の為に」
「そこまでされる大名なぞ聞いたことがありませぬ」
「それがしもです」
「いや、そうでございますか?」
「大名といえばです」
「もうそれは」
町衆、承認の立場から返す彼等だった。
「それこそ。税を取り立てるだけで」
「町の整備なぞは」
「しかし信長様は違うのですか」
「そう仰っていますか」
「嘘と思うのならば尾張や美濃を御覧下され」
信長のお膝元、そこをだというのだ。
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