第八十九話 矢銭その二
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「攻めるとすればそれこそ」
「十万以上の兵か」
「それだけの兵が必要じゃな」
「十万ではききませぬ」
蒲生はそう見ていた。
「石山は物凄い場所ですな」
「あの地に城を築いたことがか」
「そのまま本願寺の強みとなっておるか」
「はい、尋常ではありませぬ」
こう言うのだった。そしてだ。
彼等はじっとだ。本願寺の出方を見ていた。攻めてくるのではないかと身構えつつ石山の隣を進んでいた。その彼等のところにだ。ふとだった。
石山の方から僧侶達が来た。その彼等を見て蒲生達は余計に身構えた。しかしだ。
彼等は穏やかにだ。こう言ってきたのだった。
「あの、宜しいでしょうか」
「宜しい?」
「宜しいとは」
「織田信長殿に御会いしたいのですが」
これがだ。僧侶の言葉だった。
「少しお話がしたいのですが」
「殿とですか」
「殿とお話がしたいのですか」
「はい、左様です」
その通りだとだ。その一向宗の僧侶は答えた。そうしてだった。
蒲生達は顔を見合わせた。そのうえで言い合った。
「殿の御前に案内しますか」
「そうしますか?」
見たところ僧侶が話をしに来たのは間違いない。それではだった。
彼等はその僧侶を信長のところに案内することにした。こうしてだ。
僧侶は信長の前に案内された。そうしてだった。
信長は本陣において僧侶の話を聞いた。その話はというと。
「矢銭をか」
「はい、献上したく参りました」
だからだとだ。僧侶は信長に話す。本陣には諸将達が集っている。
その彼等に囲まれ信長の前にいてだ。僧侶は話すのだった。
「そして本願寺は織田殿が和泉に入られることを歓迎致します」
「敵にはならぬというのじゃな」
「はい」
まさにその通りだというのだ。
「我等が法主のお考えです」
「顕如殿のか」
「そうです。織田殿は一向宗についてどう思われていますか」
「揉めるつもりはない」
一言でだ。信長は答えた。
「特にじゃ。そんなつもりはない」
「そうですか。それでは」
「うむ、矢銭のことじゃが」
信長は本願寺が出してくるその矢銭のことについても言及した。
「喜んで受け取ろう」
「そうして頂けますか」
「それが顕如殿の心尽くしならな」
それならばだ。是非にというのだ。
「慎んでな」
「有り難きお言葉。それでは」
「帰って顕如殿に伝えられよ」
微笑みさえ浮かべてだ。信長は言った。
「矢銭のこと、礼を言うとな」
「それでは」
こうしてだ。信長は本願寺からの矢銭を受け取った。矢銭はすぐに織田軍の前に持って来られた。それは車に幾つも乗せられた銭だった。それを見てだ。
足軽達は息を飲む。しかもそこにはだ。
「餅まであるぞ」
「銭も凄いが餅も収めて
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