第八十八話 割れた面頬その三
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信長はその逃げ遅れ囲まれている三好の兵達を見てだ。こう命じた。
「無駄な血を流すな。まずはじゃ」
「捕虜にせよというのですか」
「敵兵達を」
「捕虜にして武器を奪い取ればよい」
そうして無力化して終わらせるというのだ。
「後はこちらの兵にするなり百姓に戻すなりせよ」
「わかりました。それでは」
「あの者達には降伏を勧めます」
こうしてだ。信長は三好の兵達に投降を勧めた。するとほぼ全ての者がその場で刀や槍を捨て戦を止めた。そして疲れきった顔で崩れ落ちるのだった。
その彼等を見てだ。信長は傍らにいる毛利と服部にこう言った。
「疲れが大きいのう」
「やはりですか」
「そのせいですか」
「徹夜でずっと張り詰めておったのじゃ」
そうしていればだ。疲れるのも道理だというのだ。
「だからじゃ。ここまで簡単に降るのも道理じゃな」
「では夜に攻めるよりもですか」
「こうして朝に攻めるのもよいのですな」
「その時と場合で変わるものじゃ」
常によいとは限らないというのだった。
「朝に攻めてもよくない場合もある」
「では敵次第ですか」
「敵がどういった状況にあるかですか」
「それに天気や地もある」
そうしたものもだ。信長は見て考えていた。
「常にはできんわ」
「では時と場合によってですか」
「そういうことですか」
「そうじゃ。まさにな」
こう言ってだ。そうしてだった。
彼は今や青に覆われようとする城を見てだ。また言うのだった。
「後はあの男じゃな」
「そうですな。あの面頬の男」
「いよいよその顔を確めますか」
「わしはもうおおよそ察しておるがな」
仮面の男が誰なのかということをだった。信長は察していた。
だがそれでもだ。彼は己で見ることを大事にする。それならばだった。
「しかしそれでもじゃ」
「殿ご自身の目で見てですか」
「そのうえで」
「うむ、そうして確める」
あえてそうするというのだ。
「それからじゃな。はっきり言うのは」
「はっきりといいますと」
「殿が知っておられる者ですか」
「御主達も知っている筈じゃ」
信長は森と池田達にも言った。彼の左右に控えている彼等にもだ。
「よくな」
「よく、ですか」
「我等もですか」
「そうじゃ。こう言えばわかるか」
こう問われるとだ。二人もだった。
やや考える顔になりそのうえでだ。こう言うのだった。
「まさかと思いますが」
「あの男でしょうか」
「察しがついたようじゃな」
「はい、幾分かですが」
「おおよそのところは」
そうなったとだ。二人も答える。そして信長の周りを固める毛利と服部もだ。お互いに顔を見合わせてだ。そのうえでまさか、という顔になっていた。
織田家の面々はおおよそ察していた
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