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戦国異伝
第八十八話 割れた面頬その一
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                 第八十八話  割れた面頬
 織田軍の城攻めは続いていた。その中でだ。
 滝川は今度もだ。鉄砲を撃つことを命じた。
「撃て!」
「撃て!」
 命が繰り返されそうしてだ。鉄砲が撃たれた。それによってだ。
 三好の兵達の中に倒れる者が出て音に怯む者が出ていた。そこまで見てだった。
 滝川は今度はだ。こう命じたのだった。
「では忍の者達を向かわせよ」
「甲賀ですか」
「あの者達を」
「うむ、向かわせよ」
 忍の出である彼等をだというのだ。
「よいな。それではじゃ」
「はい、それでは」
「今度は」
「鉄砲での攻撃は続ける」
 これは止めなかった。敵を撃ちその音で怯ませる為だ。
 だがそれだけではなかった。滝川は忍を使うことも命じたのだ。その命を受けてだった。
 忍達が敵の隙を狙ってだ。門に近付きそのうえでだ。
 影の如き動きで門をよじ登りそこにいる兵達を蹴散らした。それからだった。
 門を占拠しそのうえでだ。門を開けてしまったのである。それを見てだった。
 信長は会心の声でだ。こう叫んだ。
「あの門から入るのじゃ!」
「はい!」
「それでは!」
 信長のその言葉を受けてだ。即座に青い具足の足軽達が津波の如く動いた。そのうえで。
 一つの門に殺到しその門から城中に雪崩れ込む。それを櫓の上から見てだ。
 面頬の男は怒号でだ。こう叫んだ。
「あの者達を押し返せ!」
「か、畏まりました!」
「では!」
「急ぐのじゃ!」
 男の言葉には明らかな焦りがあった。
「よいな、そしてじゃ」
「はい、織田の者達を押し返しましょう」
「何としても」
「他の場所からも兵を回せ」
 とにかくだ。男は城の中に入った織田の兵達を押し返すことしか考えていなかった。
「よいな。それではじゃ」
「そうですな。ではすぐに」
「本丸からも兵を送りましょう」
「とにかく急ぐのじゃ」
 男はその兵達を見ながらさらに話す。
「さもなければすぐにここまで攻めて来るぞ」
「ですな。数は圧倒的です」
 城は十重二十重に囲まれている。数の差は言うまでもなかった。
「ここでさらに入られればです」
「どうにもなりませぬな」
「では何としても」
「ここは」
「防ぐのじゃ」
 意地を出してだ。男は言う。
「何としても。よいな」
「わかっております。まことに」
「では兵を出しましょうぞ」
 他の者達も言いだ。そうしてだった。彼等は本丸からも兵を出し城内に入った織田軍を押し返そうとしてきた。だがそれを見てだった。
 滝川はまただ。こう言った。
「城の裏門じゃ」
「次はですか」
「そちらにですか」
「忍の者を送れ」
 そちらにもだ。そうせよというのだ。
「よいな。してじゃ」
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