第八十六話 竹中の献策その九
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それは百姓だった者達も同じでだ。こんな有様だった。
もう逃げることを考えてだ。こう言い合っていた。
「織田の軍が来たらさっさと逃げるか」
「うむ、そうじゃな」
「逃げてそれで田舎で楽しくやるぞ」
「銭さえ貰えればいい」
「それだけじゃな」
こんな調子だった。三好軍の士気は低かった。それに対してだ。
織田家の軍勢は違っていた。彼等は弱兵と言われているがそれでも確かな軍だった。それでだ。
浮き足立っているというよりは今にも逃げようとしている目の前の三好の軍勢を見てだ。呆れた様に笑って言うのであった。
「あれは何じゃ」
「うむ、今から逃げようとしておるぞ」
「それではどうということはないのう」
「大した戦にはならんな」
「そうじゃな」
「いや、油断はならん」
笑う彼等にだ。蒲生が告げた。
「敵は誰であろうが侮ってはならぬぞ」
「はっ、そうでしたな」
「そのことは」
「侮れば敗れる」
こう足軽達に言うのだった。
「その時点でじゃ」
「侮ると隙が生じる」
「そこからですか」
「うむ、だからこそ侮ってはならぬ」
蒲生はあくまで正面を見ていた。そこにいる敵達をだ。
それは確かに雑軍だ。しかしそれでも彼は侮っていなかった。
その敵達を見ながらだ。さらに言うのだった。
「蜂が熊を退けることもあるのじゃ」
「蜂が熊をですか」
「そうできるのですか」
「そうじゃ。だからこそ油断せず攻めて倒す」
蒲生は今度は青い具足の者達、己がいる軍勢を見る。確かに強さはあまり感じられない。だがそれでも雑軍ではないことは確かだ。その彼等に対してだった。
彼は高らかにだ。こう命じた。
「よし、突撃じゃ!」
「おおーーーーーーっ!」
その言葉を受けて蒲生率いる織田家の軍勢は一気に突き進む。青い軍勢が動くその姿は津波の様であった。その津波を見てであった。
三好家の軍勢、浪人や百姓から入った者達はだ。それを見てだ。
浮き足立った。それで狼狽さえ見せていた。
「き、来たぞ!」
「織田家が攻めて来たぞ!」
「何じゃあの長い槍は!」
「しかも弓矢も多いぞ!」
織田家の装備はかなりのものだった。それも三好家とは全く違っていた。
そういったものも見て彼等はさらに浮き足立つ。その彼等を見てだ。
三好家の足軽頭や足軽大将達が踏み止まらせようとした。しかしだった。
彼等の動揺は収まらない。それを本陣から見てだった。三人衆は項垂れる顔で言った。
「まずいのう、これは」
「うむ、所詮は銭で雇った者達か」
「雇いはしたがな」
だがそれでもだというのだった。
「これではかえって逆効果じゃ」
「このままだと軍が壊走するぞ」
「どうしたものじゃ」
刃を交える前からそうなっていたの
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