Dix
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、その痛みは想像するしかできない。演技ということもあるわけだ。わたし以外の他者が、わたしと同じように痛みを感じ、苦しんでいると考えるのは早計だという考え方もあるとわたしは考える。
と言うことは、究極の話、わたし以外のものはこの世界で、息をしていないのと同じだ。わたし以外の人間が、わたしと同じように痛覚を持ち、感情を携え、呼吸をしているだなんて、一体誰にわかるのだろう?他者のその痛みを、苦しみを、悲しみを、ただ想像するしかできないのに?この世界中で、実は生きているのがわたしひとりだけと言われてもわたしは驚かない。
だから、わたしはわたしを一番大事にして、一番信じる。その他のものは、全てガラクタと同じ。人も、人形も、わたしにとってはかわらない。
つまり何が言いたいのかと言うと、だからそんなことを考えるわたしは、世間一般から考えると確実に「狂って」いるし、でも世間一般なんて、わたしにしたら気にかける価値なんて微塵も見当たらないから、わたしの見地でわたし自身を判断すると、わたしはこの上なく「正常」だ、ということ。
「だからおまえは好きだよ」
エルも笑った。きっとわたしたちは同じ顔で笑っているんだろうと思う。
わたしたちは、「正常」で「狂っている」。それを自分でわかってる。
だから多分、わたしはルパンが疎ましい。ルパンはちゃんと人間だから。
生きるために進んで黒く染まったわたしには、わたしの傷に一喜一憂してしまうルパンよりも、自分を狂っていると言いきれるエルのほうが、やはり気安いのだ。
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