第八十六話 竹中の献策その八
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「国人共も織田につきだしておるわ」
「元々近畿は国人達が複雑じゃ」
近畿独自の事情である。
「それをどうするかじゃな」
長逸がまた言った。
「これまでは信用できんまでもおかしな動きはしておらんかったな」
「大抵の者はな」
今言ったのは岩成友通だった。
「そうじゃったがな」
「しかし織田が来たことによりじゃな」
「そちらに急になびきだしたわ」
長逸と政康はまた話した。
「ここで我等が負ければ危ういぞ」
「国人達は一気に織田になびく」
「さすれば我等は終わりじゃ」
「近畿におれなくなるわ」
「数のうえでは互角にこぎつけはした」
友通はそれはだというのだった。
「しかし。あくまで数だけじゃ」
「そうじゃな。所詮は烏合の衆よ」
「ただの寄せ集めじゃ」
このことは長逸も政康もよくわかっていた。何しろ彼等が集めたからだ。その者達が烏合の衆でしかないということはよくわかっていた。
それでだ。彼は言うのだった。
「何かあればすぐに逃げ出すわ」
「しかも正面の織田の軍勢とだけ互角じゃ」
「総数では負けておるからのう」
そうした意味で大きく劣っていた。それが今の三好の状況だった。
それでだ。彼等は話すのだった。
「一戦交えて終わりやもな」
「近畿を失うか」
こう考える彼等だった。織田家に勝てるとはあまり思っていなかった。
そうした意味で彼等は最初から負けていた。だがそれでもだった。
友通がだ。二人に対して言ってきた。
「先陣はあの者じゃがな」
「うむ、果たしてどうなのか」
「役に立つのか」
首を捻りながらだ。長逸と政康も話した。
「どうもな。あのことを聞くとのう」
「不安で仕方ないわ」
こう話してだった。その先陣の者についても話された。
「酒と女に溺れてじゃからな」
「国を失っておる」
「その様な者を用いるのものう」
「どうかと思ったがな」
三人衆は彼の登用についても不安だった。だがそれでもだった。
今の彼等の状況ではとにかく背に腹は代えられなかった。とにかくそれが現状だった。将となれるのなら一人でも必要だったのである。
それでだ。また言う彼等だった。
「しかしじゃな」
「まあ仕方ないのう」
「雇い入れたのならな」
こう三人で話していくのだった。
「働いてもらうか」
「勝つか負けるかにしてもな」
「弾除けにはなるじゃろう」
あまり期待していないのは明らかだった。それではだった。
その者は先陣としてその役目だった。とにかく彼等はあまり勝てる自信はなかった。
それは雇われた浪人達も同じでだ。こんな調子だった。
粗末な具足と槍を手にしてだ。そして言うのだった。
「銭は貰ったしのう」
「後はどうするかじゃな」
「さて、逃
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