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魔王の友を持つ魔王
§1-? 数百年前
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習がこんなところで役立つとは。
 それより問題は人間時代、つまり引きこもり少年時代だった頃に戻った、ということだ。身体能力が壊滅した、ということでもある。致命的な弱点となってしまった以上魔術強化で補うしかない。神殺し時代とは比ぶべくも無いが、魔術強化しないよりはマシだろう。強化すれば聖騎士級までとはいかずとも大騎士一歩手前くらいまでなら追随可能だと思いたい。

「しかも呪力ガタ落ちってのが笑えないな……地道に鍛錬しかないか」

 呪力が神殺しとなる前まで戻ったことにより、激減してしまったことも痛い。こっちは訓練で伸ばしていくしかないだろう。一般人クラスの身体能力&凡人級の魔力量ではまつろわぬ神と戦っても嬲り殺しに合うだけだ。下手をすれば聖騎士にも劣る。今後の課題を認識した彼は、下を向いていた顔を上げる。

「さて、とりあえずこれで問題は解決でしょう。パンドラさんに文句言われたけど」

 今回のように破滅の呪鎖で絡め取り一方的に攻撃するのは次から権能を増やさない、と言われてしまった。破滅の呪鎖は使い道に気をつけなければならなくなりそうだ。戦法に頭を悩めつつも気を取り直した黎斗は朝の日差しを背に、宿泊している村へ戻る。ヤマの撃破に伴い、死の瘴気は無くなっているだろう。村のみんなが無事だとよいのだけれど。





「…………」

 世話になっている村への帰り道、金色の毛並みのキツネが足元に倒れている。何かの事情で右前足を失ったキツネ。既に呼吸をしていない。そっと、手を触れてみる。冷たく硬い感触が、黎斗の指を迎え入れた。

「……はぁ」

 迷子になり空腹で今にも倒れそうな彼を今居る村まで案内してくれたのは、このキツネだった。罠にかかっているのを助けはしたが、それだけだ。カイムの権能で植物と会話することが出来ても動物と会話はまだ黎斗には出来ない。意思疎通ができないにも関わらず村までの道を案内してくれたのだ。
 そのキツネは、もう動かない。周囲を見渡せば木々が枯れている。この辺はヤマの瘴気に当てられた領域か。

「恩人……じゃない。恩狐が死んでいる、ってのは目覚めが悪いな。やっぱり」

 それは、禁忌を破る決意。死者は蘇らない。世界の根本原理を覆す力。地獄の主、閻魔王となったヤマのもう一つの権能。

「開け、黄泉の扉。地獄の主たる我に応えよ。魂を、呼び戻せ。喪われた時を、巻き戻せ。我は遍く死を司る者。死を領域とし、万物を従える者。終焉を破棄し輪廻を呼び込まん」

 一つの種に対し、同時代に現界させられる魂は一つのみ。このキツネを蘇生させれば、このキツネが死なない限り黎斗は他のキツネを蘇らせることができない。しかし、これは完全な蘇生を可能にする力。肉体のみの復活や人格の完全再生(リプレイ)などといった程度の能
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