§1-? 数百年前
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に概念的な死を与えることなど出来はしない。もう死んでいるのだから死にようがない。黎斗はそう思い納得している。死者から生命力を奪うなんておかしな話だ。まぁ、死者が動いている時点でおかしいのだけれど。
「……そういやあの女神サマも死んだカミサマか」
自身が最初に屠った神も冥府の神であったことを思い出し嘆息。眼前の神との違いを考察したくもあったがそんな暇は無さそうだ。彼女の力の行使も考えたが、やめる。まだ最後の鬼札を切るつもりは、ない。
「どうした神殺し?」
挑発してくるヤマに沈黙で答える黎斗。とにかく、これで手札は無くなった。彼は防御系の能力こそ豊富にあるが、攻撃系の能力が少ない。負けはしないが勝てもしない、いわゆる千日手になりやすいのが現在の欠点だ。だが、今はそんなことを憂いている余裕など無い。やはり、物理的に破壊することで死を与えるしかない。
「……しょうがない、普通に奥の手だ」
ヤマの呪力は莫大。半分以上削ったとはいえ、おそらくあと三十回以上は殺さねばならない。正攻法を諦めた黎斗は、一対一の戦闘の切り札を切る。それはこの場に敵がもう一人でも居た場合、黎斗の敗北を確定させかねない諸刃の剣。
「天空よ、我が名の下に裁きを与えよ。未来より迫る滅びを縛れ。左に剣を。右には鎖を。我が腕を贄とし汝を封ぜん!」
言霊を紡ぐと黎斗の右腕が壊死を始める。それは、天空神テュールの権能、破滅の呪鎖の代価。一ヶ月もの長きに渡り彼は利き手を奪われる。だが、この力はその欠点を補って余りある力。邪眼と破滅の呪鎖。この二つこそ黎斗がシルクロードを旅していた頃、破魔の主と呼ばれ畏怖された所以。相手に行動をさせないのが彼の戦闘法。どんな相手でも封殺する。一切の抵抗を許さず潰す。数百年を生き延びて来たのは流浪の守護だけに頼ってきた訳では無く、また決してまぐれなどではない。
「ぐっ、なんだこれは!?」
鎖に囚われ叫ぶヤマ。グレイプニールに絡め取られ自由を失った相手は、自力で戒めを破れない。たとえどんな権能を持っていたとしても、どんなに身体能力が高くても。一度捕まってしまえば脱出は不可能。転移も、破壊も、憑依も、ありとあらゆる力を撥ね退ける。外部より攻撃を受けるその日まで、所有者を破滅より守護し続ける呪いの鎖。外部からの攻撃には非常に脆いが、内部からの行動には絶対を誇るインチキじみた、滅びの鎖。紐でなく鎖なのはパンドラ曰く黎斗の心理が関係しているらしいが、鎖でも紐でも構わない。今の彼にとっては形状より効果こそが重要なのだから。
「こういうのは卑怯であまり好みではないのだけれど、流石にこ
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