第八十六話 竹中の献策その二
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「本願寺についてじゃが」
「その本願寺についてですか」
「殿はどうお考えでしょうか」
「力をつけ過ぎておる」
信長は警戒する顔だった。
「あまりにもな」
「確かに。今の本願寺はです」
森がだ。険しい顔で述べた。
「加賀を完全に手中に収め紀伊もです」
「ほぼ本願寺のものになっておるな」
「あの辺りの国人達は門徒が多いです」
本願寺の門徒達という意味であることは言うまでもない。
「そしてその中には厄介な者がおるとか」
「厄介と申すか」
「雑賀孫一ですが」
「聞いたことがある」
すぐにだ。信長はその雑賀孫一という名前にも反応を見せた。
「忍の者でありその得意とする技じゃな」
「鉄砲の使い手だとのことです」
「織田家も鉄砲はかなりのものじゃがな」
織田家の鉄砲の数は一千に至る。かなりの数であることは事実だ。
だがその雑賀孫一という者はだ。どうかというのだ。
「しかしです。あの者、そして雑賀党はです」
「千ではきかぬか」
「それ以上持っているとのことです」
「その者が本願寺についておるな」
「左様です」
「しかも近畿を中心にあちこちに門徒がおる」
信長は本願寺についてだ。難しい顔で述べていく。
「迂闊に敵に回せば危うい」
「では本願寺とは」
「本願寺でなくとも寺社の力は削いでおく」
これもまた、だ。信長の政である。
「今のところは検地を進め国人達を組み込むと共に寺社の不当な地を我が家に組み込んできたな」
「はい、確かに」
「そうしてきました」
「しかしそれだけではない」
信長は寺社を警戒していた。大名達に匹敵する程に。
それ故にだとだ。彼は言うのだった。
「檀家というものを考えておる」
「檀家ですか」
「それは一体」
「うむ、寺の信者の布施で寺を支えさせるのじゃ」
土地を持たせるのではないというのだ。
「そうしてその中で生きてもらうのじゃ」
「では寺社から土地や僧兵を除きますか」
「そうされますか」
「そうしなければこれまでと同じじゃ」
信長が見ているのはこれまでの日本の政権だった。その政権はというと。
「朝廷にしろ鎌倉幕府にしろ室町幕府にしろじゃ」
「僧兵は抑えられませんでしたな」
今言ったのは生駒だった。
「あの白河院ですら」
「そうじゃ。延暦寺の僧兵はどうにもならんかったな」
「無論平家も」
彼等もだった。日輪を動かせたという平清盛でさえだ。
「そうした存在じゃからな」
「何としても力を削がねばですか」
「どうにもならん。国人達はこのまま我が家に完全に組み込み家臣として遇する」
確かに難しいがだ。そうしていくというのだ。
「それを先にしておくがな」
「そして寺社ですか」
「そうなりますか」
「特に本願寺
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