第八話 清洲攻めその十
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そこしか逃げ場所がなかったからだ。しかしである。そこにも敵がいた。
「来ました」
「こちらに」
「うむ、そうだな」
丹羽だった。彼は周りにいる者達の言葉に頷いていた。彼はいささか不安げな顔である。
そしてだ。その中でこう言うのだった。
「殿はわしに左軍を任せて下さったが」
「それへ殿が五郎左殿を見込まれてでしょう」
「喜ぶべきことですぞ」
その彼に川尻と佐々が話す。
「ですからここは」
「思う存分戦いましょうぞ」
「そうだな。それしかないな」
丹羽も二人の言葉を受けてそれで頷いたのだった。それでだ。
総崩れになっている敵が来るのを見てだ。まずはこう命じたのだった。
「よし、撃て」
「鉄砲ですね」
「まずは」
「そうだ、撃て」
こう川尻と佐々に命じる。
「まずはだ」
「わかりました、それでは」
「その様に」
「そしてそれで動きを止めてだ」
それからであった。
「槍だ」
「槍兵をどうしますか」
「それで」
「前に出る」
そうするというのである。
「それで一気に突く。そうしよう」
「はい、その通りです」
「それでは」
「まずは撃つ」
また撃つと話してであった。それでだ。
実際に鉄砲を放ちその総崩れの軍勢をさらに打ち。そして槍で突くとであった。
最早信友の軍は何もできなかった。三方から攻められてだ。それでもう後方に逃げ去ることしかできなくなってしまったのである。
その中でだ。太膳は主の傍に来て言う。
「殿、最早こうなっては」
「退くしかないか」
「はい、それしかありません」
こう主に話す。
「殿軍はそれがしが」
「してくれるか」
「それで清洲まで退きましょう」
「そうだな。そしてそれからは」
「篭城です」
また主に話した。
「そして他の城と連携を取りです」
「信長の奴に仕返しをしようぞ」
「ではここは」
「退け、退け!」
信友は自分からこの命令を出した。
「清洲まで退くぞ!」
「は、はい!」
「それでは!」
総崩れになった信友の軍勢はこれで撤退に入った。太膳が殿軍に入る。
しかし信長の軍勢は今度は三つの軍を一つに合わせてだ。そのうえでその退こうとする信友の軍勢に対して殺到するのであった。
「追え!追え!」
「清洲まで帰すな!」
「ここで叩いておけ!」
主だった将達が口々に叫ぶ。
「総大将の首を取れ!」
「取った者への褒美は思いのままぞ!」
「よし来た!」
木下がその言葉を聞いて前に出る。
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