第八十五話 瓶割り柴田その六
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慶次がいた。彼は巨大な朱槍を両手に持ったうえで。六角の陣に斬り込んだ。
「行くぞ松風!」
「ヒヒーーーーーーーーーーン!!」
松風も応えていななきだ。慶次に応えた。そのうえでだ。
慶次は前を薙ぎ払った。するとだ。
敵兵が幾人も吹き飛んだ。彼の槍を受けそのうえでだ。
そしてその吹き飛んだ先にだ。松風を踊り込ませた。
慶次が槍を振るうと首が、腕が、胴が派手に乱れ飛び血煙が起こった。彼はまさにその中で荒れ狂う一人の鬼神だった。そして鬼神は彼だけではなかった。
可児もだ。敵陣に己の馬を踊らせそのうえでだ。派手に暴れだした。
「はははははは!最期に笹の味を教えてやるぞ!」
敵を次々にだ。薙ぎ倒しながらだ。
倒した敵のその口に笹を投げて差し込んでいく。血煙の中に緑の笹が見える。
そしてその彼等の次にだ。織田家の騎馬隊の主力が来た。柴田はその中で大音声で命じていた。
「このままじゃ!一気に決めよ!」
「はっ、では!」
「今より!」
「かかるのじゃ!」
柴田のいつもの言葉も出た。それと共にだ。
彼等はまさに怒涛の如く攻めた。六角の兵達を次々に倒していく。
その彼等を見てだ。六角は呆然としながら言った。
「な、何じゃあの強さは」
「先頭にいるのはあの傾奇者前田慶次です」
「そして笹の才蔵です」
「あの二人のことは聞いておる」
こう返す六角だった。
「しかしじゃ」
「はい、あの二人だけではありませぬ」
「織田の軍勢全体がです」
「恐るべき強さです」
こう言うのだった。
「織田の兵は弱いと聞いています」
「実際に先の戦では兵の強さ自体は大したものではありませんでした」
「しかしこの度は一体」
「何故ここまで強いのでしょうか」
「将であろうか」
六角の目にも柴田が見えた。自ら刀を手に馬上から指示を出す彼をだ。
そのうえでだ。こう言ったのである。
「将の質じゃ」
「かかれ柴田ですか」
「織田家随一の猛将の」
「うむ、例え雑兵でも確かな将が率いれば精兵になる」
六角はよく言われていることを述べた。
「そういうことであろうか」
「あの柴田勝家が率いるからこそこの強さ」
「そうだというのですか」
「この度は」
「そうやもな。しかしじゃ」
ここでだ。六角は何とか我を保ってだ。そのうえで指示を出した。
「槍じゃ、槍を前に出してじゃ」
「敵の騎馬隊の動きを妨げる」
「そうされますか」
「そうじゃ。ここはそうせよ」
まさにだ。馬を止めよというのだ。
「馬は動きを止めればどうということはない。だからじゃ」
「畏まりました、それでは」
「今より」
家臣達も主の言葉に応えて槍兵達を動かした。しかしその間に六角の軍勢は騎馬隊によりその陣をかなり乱さ
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