暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第八十五話 瓶割り柴田その一
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

                    第八十五話  瓶割り柴田
 城の中でだ。慶次は奥村に対して言ってきた。
「のう。それで権六殿じゃが」
「何故動かぬかというのじゃな」
「そろそろだと思うのじゃがな」
 慶次郎は自分の見立てを話した。
「しかしそれでもか」
「うむ、まだじゃ」
「ふむ。権六殿といえばじゃ」
 ここで慶次は自分から見た柴田を語った。
「とにかくすぐにかかれと言われると思うのじゃがな」
「確かにな。権六殿ならばな」
「御主もそう思うじゃろ」
「うむ。それにそろそろであろう」
 奥村は真面目そのものの顔で慶次に答える。飄々とした感じの友も違い彼は真面目な顔である。その顔でその友に対して答えたのである。
「攻めるならばな」
「攻めるのなら権六殿じゃしな」
 柴田の攻めの上手さには定評がある。攻めなら彼、退くなら佐久間とだ。信長も認め全幅の信頼を置いているのだ。そしてそれだけにだ。
 慶次もだ。少し疑念を抱いた顔で言うのだった。
「わしから見てもそろそろだと思うがのう」
「うむ。わしもそう思う」
「しかし動きはない」 
 また言う慶次だった。
「何故であろうな」
「既に六角の軍勢は川の向こう側におる」
「野洲川のじゃな」
「そうじゃ。そこにおる」
 物見で確めた通りだ。それは間違いなかった。
「紛れもなくのう」
「それではこの城から川まで一気に進む」
「そうするべきじゃがな」
「しかし動かれぬ」
 どうしてもだった。柴田はだ。それでだ。
 二人はいぶかしんでいた。そのうえで向かいながらだ。話すのだった。
 だがここでだ。慶次はこんなことも言った。
「話をするのもよいがじゃ」
「水じゃな」
「うむ、水を飲もうぞ」
 二人は汗だくになっていた。この時もだ。
 日は高くその光が彼等を照らす。その下でだ。慶次は奥村にこう提案したのである。
「さもなければ倒れてしまうわ」
「そうじゃな。しかしじゃ」
 奥村も水を飲むことには同意した。しかしだった。
 彼は同意しながらもだ。こう慶次に言った。
「水もじゃ」
「少ないというのじゃな
「この暑さじゃ。皆かなり飲んでしもうた」
「だからか」
「かなり減っておる」
 そのだ。水がだというのだ。
「あと少ししかないぞ」
「そうなのか。ではじゃ」
「少しだけにすべきじゃ」
 そのだ。水を飲む量はだというのだ。
「そうしてそのうえでじゃ」
「今は我慢すべきか」
「何時権六殿が出陣と言われるかわからんからのう」
 奥村は冷静にこう言った。
「だから今は少しにしておこうぞ」
「ううむ。わしは思いきり飲みたいのじゃがな」
「そこは我慢せよ」
 駄々っ子を前にした様にやれやれといった笑みでだ。奥村は慶次に話
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ