§15 知りすぎた者
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
られ、弾かれた。しかし、それも織り込み済みだ。弾かれた勢いを利用し、背後へ跳躍。結界の中心と思しき板切れを串刺しにする。四人の逃亡は確認済み。これで諦めてくれるといいのだけれど。
「あ……」
ドニの一言と同時に、結界の破壊される感覚。このはた迷惑な結界は効力を失った筈だ。
「……やれやれ、ここは大人しく引こうか。いつの間にかみんな逃げちゃったし板も割られちゃったし。悔しいけどこれは僕の負けかなぁ。流石に”本気”になっちゃうワケにはいかないしね。それにここで時間を食って護堂vs神様に間に合わないのはとっても困る。だからこれで妥協するよ。あぁそうそう、君名前は?」
剣を収めるサルバトーレ。残念そうな台詞の癖に嬉々とした表情を浮かべ王は尋ねる。
「水羽黎斗と申します、王よ」
「うん、黎斗か。面白い少年も発掘できたし成果は上々ということにしとこうかな。本当に護堂の周りは面白い。じゃあね」
去っていく彼を見届けて、黎斗は四人の後を追う。エル達の位置は念話でだいたい判明しているので問題はない。あるとすれば、ただ一つ。
「後始末、めんどくせぇ……」
思わず口に出してしまう。エリカと祐理だけならディオニュソスによる洗脳でどうにでもなるのだが、眼鏡の男の存在だ。
酒の神にして死と復活の神、ディオニュソス。ディオニュソスの密儀は女性信者のみに許され、男が参加するには女装するしかなかったという。密儀で踊り狂う女性は尋常でない力を誇り、自分の息子の判別すら出来ない程に狂わされることになる。ここにある彼の力の一部を用いる。ここまで聞けばアイスマンがなぜ問題なのかわかるだろう。この神、なんと権能が女性限定なのだ。
「……まぁ、美少女侍らす後輩君が増えなかっただけマシか。護堂以外に居たら迷惑すぎる」
一人による多数の美女独占、という人生格差が広がらなかったことを喜ぶべきか。はてさて洗脳できなかったことを嘆くべきか。能力を使うたびに「女性限定の能力。手加減で完全洗脳、全力で精神破壊とかねーよ。しかも声聞かせるか相手見れば即発動って下手なエロゲーも真っ青だなオイ」などと黎斗が言うのも無理はあるまい。ドニも護堂みたく周囲の人間が女性だけだったなら、こんな誤魔化すことに苦労しなくてすんだのに。そしたら全部洗脳で解決、という手段がとれる。聊か外道な気もするけれど。
「あーあぁ。権能使ってないし誤魔化せるかな……」
出来ることなら行きたくない。お母さんに0点のテストを見せる子供の気分だ。避けられない追及を想像し、回避の方策を考える。ドニの言っていた「護堂vs神様」のことなどもう頭の外だ。黎斗の足取りは亀のようだった。
「羅刹
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ