第八十六話 それぞれの思惑
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る。
「ドレイクはどうやら我等の遅参をわかっているようですが」
「表に出なければいいのですよ」
その女ルーザ=ルフトはビショットに対してこう述べた。
「全ては。わからなければいいのです」
「我等の関係と同じで」
「そういうことです」
ルーザはそれに応えて笑った。邪な笑みであった。
「だて、ドレイクの軍はかなりのダメージを受けているようですな」
「計算通りに」
「トルコとここでの戦いで。しかしまだ力はあると見るべきでしょう」
「もう一人おりましてよ」
「あの地上人ですか」
「ええ」
ショット=ウェポンのことである。
「あの者も野心を抱いております故」
「また分不相応な」
そう言う自分もそうであるが彼自身は決してそうは考えていなかった。
「技術者に甘んじていればいいものを」
「その才に溺れたのでありましょう」
ルーザはショットを侮蔑した声で評価した。
「それがいずれ自分にどう返るのかすらわからずに」
「そういったところでしょうな」
「では我々はここは」
「はい」
ビショットは彼女の言葉に頷いた。
「ゆうるりと。戦いますか」
その動きは緩やかであった。そして戦いに加わりはしたが決して派手なものではなかった。
それはショットの軍勢も同じであった。彼はスプリガンを積極的に出さず、後方に置いていた。そしてそこでミュージィと共に艦橋で酒を楽しんでいた。
「ショット様、宜しいのですか?」
「何がだ?」
ミュージィの問いに応える。
「私が出なくて」
「よいのだ、今は」
だが彼はそれをよしとした。
「今は御前が出る時ではない」
「ですが」
「ミュージィ」
ショットはここでミュージィを抱き寄せた。
「あっ」
「すぐに御前の力が必要になる。だがそれは今ではないのだよ」
「では今は」
「そうだ。ここで奴等の戦いを見るだけにしておこう」
ドレイクのウィル=ウィプスとビショットのゲア=ガリングを眺めながら言った。
「今はな。それでいいのだ」
「では時が来れば」
「頼むぞ」
「はい」
ショットもまた真剣には動こうとはしなかった。オーラバトラー隊を出しはするが切り札であるミュージィは出さない。そして戦闘も真剣みが感じられないものであった。
「フン、まあいい」
ドレイクはそんな二人に気付いていたがそれについても何も言わなかった。
「今はな」
「しかしビショット様もショット殿も」
「あの者達の魂胆はわかっておる」
ドレイクは部下にまた言った。
「どうせわしの椅子を狙っているのだろう」
「お館様の」
「首と言ってもいいかな」
「では」
「案ずることはない」
しかし彼はそれにも構うことはなかった。
「所詮小者二人に過ぎぬ。騒ぐこともあるまい」
「ですが」
「今はそれよりも前の
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