第十六話 黒真珠の間(その一)
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帝国暦 489年 3月31日 オーディン ホテル・ヴォルフスシャンツェ カルステン・キア
「今日は助かったぜ、黒姫の。何の問題も無く総会が終わったのはあんたのお蔭だ」
「そんな事は有りませんよ」
「いやいや、本当に助かった。あんたが皆の前で俺に協力するって言ってくれたからな」
ワーグナーの頭領と親っさんが話している。場所はホテル・ヴォルフスシャンツェの一階にあるラウンジだ。二人はソファーに並んで座っている。もっとも声は潜めていないから親しさを表しているんだろう。周囲にはウチの人間とワーグナー一家の人間が警戒態勢を取っている。俺は親っさんを斜め横から守る位置にいるから声は良く聞こえる。俺の隣にはワーグナー一家の人間が同じように警戒態勢を取っている。
総会は三十分ほど前に終了した。頭領以外は入れない決まりになっているから総会でどんな話が出たのかは分からねえ。だが所要時間は一時間程度の総会だったからワーグナーの頭領の言う通り特に問題は無かったのだろう。総会の間、俺達は控室でワーグナー一家の人間と他愛ない話をしていた。
遊んでいたわけじゃない、これも大事な仕事だ。ワーグナー一家と黒姫一家の絆は頭領だけじゃねえ、下のレベルでも強いもんが有る、そう周囲に思わせるためだ。当然だが話しかけてきたのはワーグナー一家からだがこっちだって横柄に出る事はしない。そんな事をすれば親っさんの顔を潰す事になる。他の組織は帰ったが今頃はワーグナー一家と黒姫一家の絆は結構強い、そう思っているはずだ。
「ベーレンスとシュワルツコフの事もだ。あんたが仕事を回してくれたからなんとかやっていけてるがそうじゃなきゃ本当に海賊になってるぜ。そうなってりゃ今回の総会でも問題になったはずだ、連中の所為で迷惑してるってな」
「ウチも助かってるんです、気になさらないでください。それより内乱でかなり影響が出ているんですか?」
親っさんの問いかけにワーグナーの頭領が頷いた。
「ウチはブラウンシュバイク公爵家とリッテンハイム侯爵家が相手だったからな。どっちにも深入りはしていなかった、それで助かったよ。それにあんたがローエングラム公にウチは中立だと言ってくれたから……、しかしそうはいかねえ所も有る」
「……」
「酷かったのはベーレンスとシュワルツコフだが他も程度の差は有れ被害は受けているようだな。内乱の間は貴族達も輸送船を動かす余裕が無かった。代わって船を動かして物を運んだのは俺達だ、今もだけどな。それなりに儲けてはいるがトータルで見れば収入は減っているだろう、それくらい貴族と組んでの商売は旨味が有った……」
「なるほど」
「そうか、あんたは辺境だから余りそう言うのは無かったか」
「ええ」
なるほどな、他の組織は貴族が居なくなっ
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