第十六話 黒真珠の間(その一)
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ラーだ、顔に苦笑が浮かんでいる。
「エーリッヒ、詰まらなさそうだな」
「そうでもないよ、十分に楽しんでいる。ローエングラム公がこの状況を見たらどう思うか、考えていた。なかなか楽しいだろう?」
ミュラーの苦笑が大きくなった。
「そんな事を言うから卿は怖がられるんだ、こっちへ来いよ」
「止めた方が良いよ、私を連れて行くと嫌がられるぞ、いや怖がられるかな」
「大丈夫だ」
「私の機嫌が悪くても?」
「……大丈夫だ、多分な」
ミュラーが俺の手を取って歩き出す。良い奴だよな、ナイトハルト・ミュラー。でもな、周囲の視線が痛いくらい集中してるぞ。……そうか、イゼルローン要塞が帝国側にある、という事はガイエスブルグ要塞を使った第八次イゼルローン要塞攻防戦は起きないわけだ。去年の黒姫一家が要塞を落したアレが第八次イゼルローン要塞攻防戦になるのか……。
いや、あれは軍の作戦じゃないからな、第八次イゼルローン要塞攻防戦はおかしいのか? 戦争じゃないとすれば事件? イゼルローン要塞乗っ取り事件? よく分からんな、後で誰かに聞いてみようか。止めた方が良いかな、嫌味に聞こえるかもしれない……。ミュラーは怪我をしないしケンプも生きてる、シャフトもそのままか……。皇帝誘拐、ラグナロック、どうなるんだ?
ミュラーに連れられて考えながら歩いて行くと一塊の軍人が居た。メックリンガー、アイゼナッハ、ルッツ、ファーレンハイト、ワーレン、ビッテンフェルト、他に若手の士官が何人かいる。双璧はちょっと離れたところで女に囲まれている。レンネンカンプ、シュタインメッツ、ケンプも離れたところで談笑している。
「連れてきましたよ」
「……」
皆黙っている。だから言ったんだ、嫌がられるぞって。ナイトハルト・ミュラーは良い奴なんだが、時々空気が読めないんじゃないかって思う時が有る。悪気が無いのは分かっているから文句は言わないけどな。しょうが無いよな、俺から声をかけるか。
「皆さん、久しぶりですね、元気でしたか」
「……」
スマイル、スマイル、目指せ宇宙で一番愛想の良い海賊、黒姫より愛を込めてコンニチハ。……なんで皆黙っているかな、空気を読めよ、俺だって我慢しているんだ。嘘でもいいから“元気だよ”くらい言えよな。
「卿に心配されずとも元気だ。卿が一人で寂しそうだったのでな、呼んでやったのだ。分かったか」
吐き捨てるような口調だった。だから俺はお前が好きなんだ、ビッテンフェルト! よくぞ喧嘩を売ってくれた、喜んで買ってやる! 俺は今最高に機嫌が悪いんだ、多分お前もだろう。
「仰る通り、寂しくて死にそうでしたよ。もう少しでローエングラム公に客のもてなし方も知らない気の利かない部下ばかりで大変ですねと同情するところでした。面目丸潰れですね、誰の面目かは知ら
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