第十六話 黒真珠の間(その一)
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て結構影響が出ているんだ。ウチがあまり影響が出ていないのはそれだけ辺境の貴族が貧乏だったって事だな。こうなってみると何が幸いするか分からねえ、あまり自慢にはならねえが慰めにはなる。
「今は皆切り詰めて何とかやっているだろうが問題はこれからだろうな。上手い具合に良い稼ぎを見つけられればいいんだが……。こればっかりはなんとも言えねえからな」
ワーグナーの頭領が顔を顰めた。親っさんも渋い表情をしている。
「これから改革が進みますし景気は良くなると思いますが……」
「俺もそれを期待しているよ。ローエングラム公には戦争なんかよりも内政に力を入れて欲しいぜ。景気が悪くちゃどうにもならん。ま、あんたの所には関係ないか……」
親っさんが首を横に振った。
「そうでもありません、辺境だけでは限界が有ります、他も良くなってくれないと……」
ワーグナーの頭領も親っさんも溜息を吐いている。海賊社会の実力者二人が溜息を吐いている。あんまり見たくねえ光景だ。
「じゃあ、俺はこれで失礼する。これからもよろしく頼むぜ」
「いえ、こちらこそ宜しくお願いします」
ワーグナーの頭領が席を立った。それを見送りながら親っさんが小さく溜息を吐いた。
「親っさん?」
「何とか景気が良くなって欲しいですね。景気が悪いと無茶をする人が出ますから……」
まあそうだよな。無茶をする人間が厄介な問題が生じかねない。そうなればワーグナーの頭領は苦労する事になるだろうし当然だが親っさんも苦労する事になるはずだ。
ホテルを出て帰ろうとした時だった。外に一人の軍人が居て親っさんをみて笑みを浮かべながら手を上げた。
「エーリッヒ」
「アントン! アントン・フェルナー」
親っさんが嬉しそうに声を上げた。どうやら昔の知り合いらしい。フェルナーと呼ばれた男が近づいて来る。ちょっと見栄えの良い男だな。この男、准将だ。まだ若いはずだけど出世している。のっぽのミュラーも大将になったって聞いてたけど親っさんの知り合いって皆偉いんだ。親っさんも軍に居たら出世してたんだろうな……。
「どうしたのかな、こんなところで」
「卿に会いに来たんだ」
親っさんがちょっと驚いたような表情をした。
「そんな暇が有るのかい、忙しいんだろう」
「まあ、少しはね」
おいおい、随分スカしてるじゃないか。“まあ、少しはね” 俺達だって暇じゃないぞ。
「ローエングラム元帥府の事務長になったって聞いたよ、総参謀長代理だとも、凄いじゃないか、おめでとう」
げっ、こいつスゲエな。あの半死人の後釜かよ。あれ、あんまり嬉しそうじゃないな。苦笑している。
「風当たりが強いよ、ブラウンシュバイク公の下に居たのに気付いたら元帥府の事務長、総参謀長代理だ」
「良かったじゃないか、借りは返した、
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