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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第一章
七話 始まりへ
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『────!』
あの日の叩き付けるような怒号と、クラナの憎しみに満ちた言葉が、なのはのあたまの中ではっきりと反響する。
クラナとヴィヴィオが拳をぶつけ合う。その動作その物が、彼女の記憶を刺激する。

なのはが今、最も危惧している事。それはクラナが、いずれヴィヴィオを傷付けるのではないかと言う不安だった。
実際、四年前のあの日から、クラナはかなりヴィヴィオを嫌い続ける態度を見せている。
なのはにはそれが、彼の中にあの日のヴィヴィオへの憎しみが未だに根強く残っている事の証明のように思えてならなかった。
もし、そうだとしたら……今もクラナは、ヴィヴィオへの憎しみをぶつける機会を窺って居るのではないか。そう思えて仕方なかった。

「(違う……)」
今までにも、そう何度も自分に言い聞かせてきた……そんな事は有り得ない。クラナはそんな事はしないと。しかし……なら今の彼のヴィヴィオへの接し方は何だと言うのか。
胸の奥にくすぶる不安は一向に消えることなく。なのはの中に変わらずあり続ける。
ならばもし、そうなった時、自分はどうするのか……ヴィヴィオを守る……?なら、クラナは?倒す……?今まで立ちふさがった敵達のように……?

「(違うよ……)」
息子と娘、どちらかを切り捨てる……?どちらを……?

「(そんな事……しない……っ!)」
ヴィヴィオを選ぶ……?何故……?クラナが悪いから……本当に……?

「(違う……!)」
そう。違う……何もクラナが悪い訳じゃない。あの時の犯人は別の人物……クラナはあくまでも被害者なのだ。クラナは悪くない……なら何故クラナを選べない……?

「(…………!)」
クラナが危険だから……?

「(違う……!!)」
クラナが手に負えないから……?

「(違う……っ!)」
なら……


――クラナが、可愛くない……キニクワナイカラ……?――

「(っ……!違うっ、違う違う違うっ……!!!)」
何度否定しても、頭の中で恐ろしい結論を導き出している自分が居る。

息子を信じたい。けれど信じられず、心の奥底で、クラナを邪魔な存在として見ている自分……これまでに何度も湧き上がり、何度も否定してきた。自分がそんな事を思うはずがないと否定してきた、どす黒く、醜い自分……

[……Master?]
「っ……」
と、愛機(レイジング・ハート)に呼び止められて、なのはは正気に戻った。頭の中にあった思考の負のループが止まり、霧散する。詰まっていた息が再開され、彼女は一度大きく空気を吸い込んだ。

[Are you OK?]
「う、うん。大丈夫」
にゃははは……と笑うと、なのはは眼前で格闘戦を繰り広げる二人に視線を戻す。


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