若葉時代・同盟編<後編>
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出された声に秘められた、ぞっとする程冷たい感情。
一瞬だけ見つめ上げてきた弟の目に涙が浮かんでいる様な気がして、焦る。
慌てて覗き込めば、今にも泣き出しそうな顔をしていた弟は歯を食いしばっていた。
銀の頭の後ろに手を置いて、自分の肩に押し付ける。
そうでもしなければ、この責任感の強い弟は自分の感情に素直になれないと私は知っていた。
――嗚咽を思わせる引き攣った声が、耳に届いて軽く視線を伏せた。
私達は、乱世に生まれた定めとして早く大人にならなければならなかった。涙を流すのは弱い証と教わり、忍びなのだから何があっても感情を抑える様にと躾けられた。
私はまだ前世の記憶が在り、別の世界の常識を知っていたからこそ、完全に忍びの習慣に染まる事は無かったが――弟は違う。
どこまでも真っ直ぐで染まり易いこの子は、私の唱える理想に共感していたからこそ、心の奥底に秘めた憎しみの感情に無理にでも蓋をせざるを得なかったんだろう。
理解出来たって、納得のいかない事は多い。
ましてや失った相手への愛情が強ければこそ、感じる憎しみの強さは一塩だ。
それが理解出来るからこそ、扉間の苦悩を責める様な真似は出来ない。
――だからこそ、話す気になった。
宥める様に、落ち着かせる様に――優しく言葉を紡ぐ。
「その感情は人として当然の物だよ。恥じる事は無い、扉間」
あの雨の日。
弟妹の前では見せなかった、私の心の醜さ。
それを話そうと、話さなければならないと……思った。
「あの雨の日……。――私もね、最初はうちはに復讐しにいこうと思ってた。集落を襲撃して、父上と母上の仇を取ってきてやろうと」
「姉者が……? まさか」
「本当だ。でも、すぐに気付いた。私達の身に起こった出来事は……この世界では珍しくもない悲劇に過ぎないのだと」
任務で殺し、任務で殺される。
これがまだ理不尽すぎる理由で殺された事件であれば、復讐のしがいもあっただろう。
――でも、現実は違った。
「ならばこそ、私の真の復讐相手はうちはの一族ではなく、この世界そのものだと私は思った。傷つけられたから、傷つけ返すだけでは??何も変わらない、変わりなどしない。ただただ……憎しみと悲しみと、どうしようもない無念が積み重なるばかりだ」
珍しくもない悲劇だ。
この世界で生きている以上、誰もがその痛みを抱えながら生きていくのが当然とされている程に。
「だったら、そうしなければいけないと人々に強いる世界そのものを、変えてやろうと、壊してやろうと私は誓ったんだ」
世界が変わらないと言うのであれば、変えてやる。
そんな酷い世界のために、私の大事な存在をこれ以上奪われてたまるか――私の行動原理なんてそんな
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