第十六話 プールと海その六
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「シリーズで二試合連続完封したのよ」
「二試合かよ」
「そう、第六戦と第七戦に先発してね」
昭和三十九年の御堂筋決戦においてそうした。尚相手は阪神だ。
「それで完封したのよ」
「連投で連続完封かよ」
「そう、それをしたのよ」
「殆ど怪物だな」
「昔の人はそれが出来たのよ」
「丈夫な人じゃないと生きられなくてしかもその中でもとりわけ頑丈な人だからか」
しかもその中で日々身体を鍛えている、それならばだった。
「そんなことが出来たんだな」
「杉浦投手も凄かったけれど同じ頃の稲尾投手も凄かったのよ」
「あっ、あの鉄腕の」
「あの人ね」
美優だけでなく琴乃も言う。景子と彩夏もはっとした顔になる。
「物凄いスタミナだってな」
「そうだったのよ。やっぱりシリーズで四連投して」
三連敗から四連勝して西鉄を日本一に導いた。杉浦のそれと並ぶ日本シリーズにおける偉業の一つである。
「凄いスタミナあったけれど」
「そうした時代に生きてた人だからか」
「スタミナが違ったの。それでその人達よりも」
里香はここで言った。
「戦前のピッチャーはもっと凄いのよ」
「あっ、沢村栄治ね」
景子はこの伝説的選手の名前を出した。巨人の選手だが沢村ともなるとそれを超えた伝説があるからだ。
「あの人とかスタルヒンよね」
「そう。そうした人達はもっと凄かったのよ」
「医療が杉浦さんの頃よりもまだ発達していなかったから」
「そうなの」
それでだというのだ。
「あの頃の選手は杉浦さん達よりさらに凄かったの」
「昔の人って凄かったのね」
彩夏はしみじみとして述べた。
「やっぱり」
「ところがね」
だがここで里香はこう言った。
「そうとも限らないの」
「あれっ、そんなにスタミナがあったのに?」
「昔の技術とかって今程じゃないから」
野球技術もまた医療技術と同じくだというのだ。
「スライダーとかもなかったし」
「あのボールは結構投げる人多いけれど」
「戦前はなかったのよ」
「そうだったの」
「フォークとかもね」
この球種もなかった。
「後ツーシームとかもね」
「色々なかったのね」
「そうなの、昔はね」
「ううん、じゃあ昔の野球って」
「今の選手とどっちがいいかっているとね」
一概に言えない、これが里香の言うことだった。
そして美優も彼女の言葉をィ聞いてこう言った。
「だから兄貴ちょっと前の選手とか今の選手も入れてるんだな」
「そこまではどうかわからないけれどね」
「昔もいいし今もいいんだな」
「私そう教えてもらったの」
里香はこのことも美優に話した。
「お祖父ちゃんにね」
「いいお祖父さんなんだな」
「そうなの。お父さんの方のね」
「そういえば里香ちゃんってい
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