第十五話 雨は駄目その十一
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「そうなの」
「ううん、じゃあ今までは」
「嫌いじゃなかったけれど」
それでもだというのだ。
「青よりずっと赤が好きだったの」
「鮮やかな赤がなのね」
「そう。絵の具にあるみたいな赤とか」
まず挙げる赤はこの赤だった。
「それにスカーレッドとかね」
「紅色ね」
「そう。えんじ色も好きで」
とにかく赤でも鮮やかな赤が景子の好みだった。
「あと青もやっぱり」
「鮮やかな色?」
「コバルトブルーとか。やっぱりはっきりした方がよかったの」
その青もだというのだ。
「紫にしても緑にしても」
「じゃあ紫陽花の紫は?」
「見たいっていう程じゃなかったの」
景子は今度は彩夏に答えた。
「特にね」
「じゃあ紫陽花の紫は?」
「淡いじゃない、紫陽花の色って」
それは紫もそうであり葉もだ。確かに緑だがその緑は黄緑がかかった様な優しい緑である。しかも雨の中なのでそれは余計に鮮やかな印象が薄いものだ。
その紫や緑も見て景子は今言うのだ。
「こうしたのってね」
「好きじゃなかったのね」
「嫌いっていう程じゃなかったけれど」
だがそれでもだというのだ。
「取り立ててみたいかっていうと」
「違ったのね」
「そうだったの。けれど今紫陽花を見てると」
景子は次第に紫陽花に近付いてきていた。そして。
その紫陽花の中の淡い赤のが集まった花達を見て里香に言った。
「これからは違うから」
「こうした色も好きになってくれるのね」
「鮮やかなだけじゃないのね、いい色って」
「色だけじゃなくてね」
それに止まらなかった。鮮やかでなくても、淡くてもいいものは。
「他の色々なことがなのね」
「鮮やかなだけだと目がちかちかしない?」
琴乃は雨の中で述べた。
「赤とか黄色とか。青も紫も緑も」
「だよな。はっきりした色ばかりだとな」
美優は琴乃の今の考えに頷いた。
「何かちかちかするよな」
「目に優しい色ってあるじゃない」
琴乃も話しながら紫陽花達を見る。そこに静かにいる蝸牛も。
「こうした色がね」
「ええ。何かそういうの今まで気付かなかったけれど」
今はどうか。景子はこのことも言った。
「気付いてあらためて見るとね」
「違うわよね」
「ええ、いいわ」
景子は自然に優しい微笑みになり里香に答えた。
「好きになったから」
「じゃあ景子ちゃんも」
「もっと見ていい?」
琴乃、美優に続いて景子も言った。
「そうして」
「私に止めたりする資格ないから」
これが今の里香の返答だった。
「だからね」
「いいのね」
「一緒に見よう」
里香の声はここでも優しい。
「そうしようね」
「ええ。それじゃあ」
「まあ最後になったけれど」
彩夏はこのことを自覚
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