第十四話 成果その十一
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だがその鴎外が医者として為したことは。
「脚気を流行らせてしまったんだよ」
「脚気?」
「あの足がむくむっていう」
「そうなんだよ。海軍は食事を改善させて脚気を根絶したけれどね」
麦飯を食わせてそれを防いだのだ。
「鴎外は脚気菌があると信じてそれを探し続け海軍の考えを間違っていると頑迷に言って突っぱね続けtね」
「それで脚気が流行った」
「そういうことなんですね」
「白い御飯ばかり食べてたら脚気になるんだよ」
必要な栄養であるビタミンB1が摂取できないからだ。その結果脚気になったのだ。
「で、現場から麦飯にしてくれと言われてもね」
「頑固に脚気菌があると言って」
「それで脚気が流行ったんですね」
「かなり死んだよ、脚気でね」
これは双方の戦争で、である。
「戦死者より多かったかもね」
「で、その責任者が森鴎外」
「そうなんですね」
「そう、そして鴎外は生涯に渡って脚気菌を探してね」
ここだけ聞けば美しい。
「そしてその責任を認めなかった」
「最悪ですね」
「森鴎外って最低ですね」
「っていうかそれ何処のお役人ですか?」
「酷過ぎますけれど」
「実際に官僚だったからね、鴎外は」
立場的には医師である以上にそうだったのだ。
「それでね」
「多くの犠牲者を出して責任を認めなかった」
「森鴎外ってそんな奴だったんですか」
「そうだよ。酷い奴だったんだよ」
実際にそうだったから始末が悪い。
「もうね」
「っていうか何か」
「最低の人間だったんですか?森鴎外って」
「洒落にならない位に」
「そんなことしてたんですか」
「そうだよ。森鴎外が脚気で多くの人を殺した様なものなんだよ」
先生の口調は厳しいものである。
「森鴎外としての名声や名誉はともかくとして」
「ええと。森鴎外の本名って森林太郎でしたよね」
「そうだよ」
この名前は教科書にも載っていた。
「それが本名だよ」
「森林太郎、医者としてはですか」
「そうしたことをしているんだよ」
「ううん、何か」
「そうよね」
クラスメイト達は首を傾げさせながら話をする。彼等にしても森鴎外のそうした話は実に複雑なことだった。
彼等はこうしたことも言った。
「漱石も酷かったっていうし」
「教科書に出てる作家ってそういうの多いのかな」
「太宰治って愛人いたわよね」
「それで子供も作ってるから」
太宰治の話も出た。これも事実である。
「愛人いるってねえ」
「ちょっと駄目でしょ」
「奥さんだけで充分じゃない」
「そうよね」
今話しているのは女の子達だった。彼女達にしては愛人や二股といったものはまさに論外、問題外のことだからだ。
それで彼女達もこう話したのである。
「森鴎外もっと酷そう
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