5-2話
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ただ視線だけが追う。
―――そしてそのままゆっくりと、オレ達の目の前を通り過ぎていった。
み、見逃した…? た、助かっ……。
―――……!
そいつは一瞥してきた。
背筋が凍る。 その視線は激しく動悸する心臓を鷲掴みした。
まるで……動くな、と恐喝するかのような眼に、オレは心までが弛緩《しかん》した。
それを最後に…サーベルタイガーは、獲物の血の跡を残して去っていった。
冷や汗が止まらない。
怪物の後ろ姿が遠く離れたというのに、恐怖が収まらなかった。
「な…なんで…行っちまったんだ……?」
「僕らより食いでのある獲物を見つけたんだ―――前菜よりも主菜、をな…。 弱肉強食―――……アイツらにとってはそれが当たり前なんだろう……」
弱肉強食…ここはディアトリマの天下などではない。
それどころか、より恐ろしい獣が存在する世界なのだと…眼の前が暗くなるような絶望的な事実だけを残して、オレ達を思い知らせる。
ピチャリ―――。
「…!」
ふと、手に液体らしきものが触れた。
一体何かとを思うと…その液体を垂らしていたのは大森さんだった。
アンモニア臭を漂わせるソレは…彼女の失禁だった。
「お…大森さん………」
明確なほどに命の危険に恐怖する顔が浮かべ、全身を小刻みに震わせる。
スカートにシミを作り、恐怖に顔を歪ませたまま、彼女は恐ろしさのあまり泣いていた。
だが彼女を侮蔑する事はできなかった…。
オレも同様に、死ぬほど恐ろしかったから…もう、今日は動けそうにない。
無力感と悪夢だけが残り、オレ達は沈黙するしかなかった。
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