5-2話
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猛然と迫ってくるその速さに危機感を感じた。
真っ直ぐ猛進するその巨躯は、車の正面衝突を思わせた。
気付けばオレは後の事を全て忘れ、ただ目の前に迫るサーベルタイガーの進路から飛び退いた。
二人を押し倒して、間一髪のところをサーベルタイガーが脇を通り過ぎていく。
だがその猛進は止まる事なく―――“ディアトリマと衝突”した
「……なっ……!?」
火蓋を切ったように、そこから一つの闘いが始まった。
鉄と鉄がぶつかり合って火花を散らすように、ディアトリマはサーベルタイガーを、サーベルタイガーはディアトリマを襲う。
怪物同士は争い、互いに相手を屠らんと牙を嘴を爪を駆使して凶暴になる。
「何で!? あいつら、互いを……っ―――!!」
目の前で野生の戦いを繰り広げる。
混じりっ気のない純粋な命のやり合いをしている。
怪物と怪物が互いに死力を尽くして暴力に火花散らせる。
オレ達には埒外の闘争。
その時、だった―――!
―――ゴアアァァァア!!!
サーベルタイガーが飛びかかり、ディアトリマの首根っこを押さえつける。
体重を乗せた肉弾を避け切る事が出来ず、ディアトリマは悪魔のような獣に捕まった。
そして―――死神の鎌が振り下ろされた。
■■■■■■■■■ァァァッッ―――!!!
二本の牙がディアトリマの首を突き立て、その命を刈り取る。
肉を裂きる音がして…骨を砕く音がして…血液を振り撒き……ディアトリマは命の限り断末魔《だんまつま》を上げる。
抗おうとする怪鳥に、悪魔の牙は決して離しはしなかった。
やがて…隻眼のディアトリマは動かなくなった。
「(マ……マジかよ…! あ……あのディアトリマが……!)」
オレ達は…その惨殺を見ているしかなかった。
ダラリと下がった首が、そこにもう力も命も尽き果てたのだと証明している。
オレ達の恐怖の象徴であった怪物が…目の前で怪物に殺された。
―――………。
サーベルタイガーは殺しきった怪鳥を食いついたまま、オレ達の方に踵を返す。
「……!!!」
ディアトリマを引き摺り、少しずつこっちに近づいてくる。
威嚇してくるようなその眼がオレ達を射抜いてくる。
「(こ……こっちに…!? …く、来るなぁ…!!)」
動けない…動く事ができない。
心臓が早鐘のように動くのに、恐怖に体が弛緩して…緩慢に進んでくる獣を前に動くきっかけが見つからない。
サーベルタイガーの歩みを
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