暁 〜小説投稿サイト〜
探し求めてエデンの檻
5-2話
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た。


 そこには怪物がいた。
 それも、ディアトリマよりも攻撃的な怪物。

 見る者を圧倒する、悪魔的な風貌(ふうぼう)
 獰猛(どうもう)な雰囲気を湛えた猫目と、王者を思わせるような猫背に沿った(たてがみ)
 大地に踏みしめるその四脚には凶器の如き鋭い爪が伸びている。

 だがそれすら凌駕する“凶器”がオレ達に見せつけてくる。

 『噛み砕く』とも『噛み切る』とも違う…『突き立てる』ために有るような、ナイフのように鋭利な―――二本の牙。
 それは異常に長く、上顎から下に向けて伸びるソレは、生き物が持つにはあまりにも危険すぎる“凶器(キバ)”。

「バ、バカな……アレはまさか……!?」
「ヒァアアァァ!!」

 何だ……アレは…!?
 何だ…あいつは!?
 何なんだ……あの怪物は!?

 虎…?
 ライオン…?

 いや、どれも違う。
 似ているけど違う。
 獣の上位に君臨する双璧と特徴が似ているようであって、アレはそれとは非なる存在だ。

 いや、ただ一つ…ただ一つだけ……思い当たる存在があった。
 二本の下に伸びる牙……それだけで連想できる。
 幼い頃に図鑑などを見て、わずかに憧れと畏怖を抱かせたその姿は、あまりにも有名だった。


 アレはまさか……サーベルタイガー!?


 ―――グルォ…ロロロロォォ……!!


 その脅威は現実味を帯びていた。
 ライオンは百獣の王だと思っていた…だが、それをも超える存在がオレの記憶の中で蘇った(思い出した)


「(はっ……挟まれたっ…!)」

 最悪だ……!

 前にはサーベルタイガー、後ろにはディアトリマ。
 逃げるという選択肢が選べないほどに、絶望的な状況に追い込まれた。
 こうしている間に、いつ襲いかかられるか…なのに対策が…何も思いつけない。

 ディアトリマだけでも十分に脅威だというのに…この“位置”はあまりにも悪すぎる。
 命が天秤に乗せられて…どっちに転んでもそれだけで殺されてしまう。
 そんな前後の睨みに晒されるオレ達は(すく)んでしまう。


「(どっちだ…どっちが来る…!?)」

 前から見下ろす隻眼(せきがん)のディアトリマ。
 後ろから牙を剥くサーベルタイガー。

 皮膚を刺すような緊張感が増す。
 心臓が激しく動くのに、猛獣の板挟みという極限のシチュエーションに体は動かせないほど脅迫感がオレを縛っている。
 十数秒でしかないこの時間は、果てしなく長く感じさせてくる。

 その均衡を破ったのは……。


 ―――グルォアァァアァア!!


 咆哮するサーベルタイガーからだった。

「ふっ…伏せろおおぉぉ!!」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ