5-2話
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た。
そこには怪物がいた。
それも、ディアトリマよりも攻撃的な怪物。
見る者を圧倒する、悪魔的な風貌。
獰猛な雰囲気を湛えた猫目と、王者を思わせるような猫背に沿った鬣。
大地に踏みしめるその四脚には凶器の如き鋭い爪が伸びている。
だがそれすら凌駕する“凶器”がオレ達に見せつけてくる。
『噛み砕く』とも『噛み切る』とも違う…『突き立てる』ために有るような、ナイフのように鋭利な―――二本の牙。
それは異常に長く、上顎から下に向けて伸びるソレは、生き物が持つにはあまりにも危険すぎる“凶器”。
「バ、バカな……アレはまさか……!?」
「ヒァアアァァ!!」
何だ……アレは…!?
何だ…あいつは!?
何なんだ……あの怪物は!?
虎…?
ライオン…?
いや、どれも違う。
似ているけど違う。
獣の上位に君臨する双璧と特徴が似ているようであって、アレはそれとは非なる存在だ。
いや、ただ一つ…ただ一つだけ……思い当たる存在があった。
二本の下に伸びる牙……それだけで連想できる。
幼い頃に図鑑などを見て、わずかに憧れと畏怖を抱かせたその姿は、あまりにも有名だった。
アレはまさか……サーベルタイガー!?
―――グルォ…ロロロロォォ……!!
その脅威は現実味を帯びていた。
ライオンは百獣の王だと思っていた…だが、それをも超える存在がオレの記憶の中で蘇った。
「(はっ……挟まれたっ…!)」
最悪だ……!
前にはサーベルタイガー、後ろにはディアトリマ。
逃げるという選択肢が選べないほどに、絶望的な状況に追い込まれた。
こうしている間に、いつ襲いかかられるか…なのに対策が…何も思いつけない。
ディアトリマだけでも十分に脅威だというのに…この“位置”はあまりにも悪すぎる。
命が天秤に乗せられて…どっちに転んでもそれだけで殺されてしまう。
そんな前後の睨みに晒されるオレ達は竦んでしまう。
「(どっちだ…どっちが来る…!?)」
前から見下ろす隻眼のディアトリマ。
後ろから牙を剥くサーベルタイガー。
皮膚を刺すような緊張感が増す。
心臓が激しく動くのに、猛獣の板挟みという極限のシチュエーションに体は動かせないほど脅迫感がオレを縛っている。
十数秒でしかないこの時間は、果てしなく長く感じさせてくる。
その均衡を破ったのは……。
―――グルォアァァアァア!!
咆哮するサーベルタイガーからだった。
「ふっ…伏せろおおぉぉ!!」
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