5-2話
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―――オォーーーーイ!!
遠吠えのようなソレは、今度はかなり近い所で聴こえる。
ハッキリと聴こえるほどに接近している音源に向かって、オレ達はその方に振り向く。
そしてそいつは―――影と共に襲来して現した。
―――コ、カカカアァ…。
「ディ…!」
「ディアトリマ……!」
それは…オレ達の恐怖だった。
そいつは見下すようにこき下ろす。 そしてその顔を見て、オレ達は愕然とした。
「こ、こいつ………!?」
そのディアトリマには…そこにあるべきはず片方の眼球がなかった。
そこにあるのは肉が抉れ、一筋の傷痕を残す痛々しい横顔。
隻眼―――まさかあの時、睦月さんに撃退されたディアトリマなのか…!?
もしかして……オレ達を追ってここまで来たのか!
片目を奪われた事による執念だとしたら……だとしたら、なんて執拗なやつだろうか。
「くっ……!」
こうして改めて相対して実感する。
その巨大な体躯を前に、人間ではあまりにも無力。
まともに戦おうとしたらとても敵わない、そう思わせるほどの埋められない“差”がオレと怪鳥の間にはあった。
羽毛を膨らませて脅威を撒き散らす怪鳥は、変わらず与えてくる恐怖が全く薄れていない。
「こんのぉ、あっち行けよ!!」
オレはその場に落ちている石を拾って投擲した。
カァン、と嘴に当たると、硬質な音を立てるがそれはあまりにも貧弱な響きだった。
「(くっそがぁ……こんなもんじゃ効かねーか!?)」
オレが投げつける石つぶては、あまりにも貧弱だ。
睦月さんと比べれば、豪速球と豆鉄砲くらいの開きがある。
こんなものじゃ撃退するはおろか、ディアトリマを怯ませる事すら出来ない。
彼女がいれば……彼女が守ってくれれば……そう思わずにはいられない。
「おい、二人とも逃げろ!!」
背後にいる二人にそう呼びかける。
戦う力のない真理谷と大森さんでは、それ以外に選択肢はなかった。
脅威を前にして逃亡。 それが出来なければ全員殺されてしまうという焦燥に駆られる。
「…早く逃げっ……―――!?」
脇見で二人を窺う。
振り返って真理谷と大森さんと同じ方向に視線を向けた。
そしてオレは……二人が目の当たりにしている同じ存在をこの目で見てしまった。
―――ロロロォ……。
退路を塞ぐように、そいつは佇んでいた。
オレ達の恐怖を塗り替えるような……そんな圧倒的な恐怖を携えた“獣”がそこに居た。
「なっ…!?」
―――絶望と怖れが背筋を舐め
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