暁 〜小説投稿サイト〜
探し求めてエデンの檻
5-2話
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 ―――オォーーーーイ!!

 遠吠えのようなソレは、今度はかなり近い所で聴こえる。
 ハッキリと聴こえるほどに接近している音源に向かって、オレ達はその方に振り向く。


 そしてそいつは―――影と共に襲来して現した。


 ―――コ、カカカアァ…。

「ディ…!」
「ディアトリマ……!」

 それは…オレ達の恐怖だった。
 そいつは見下すようにこき下ろす。 そしてその顔を見て、オレ達は愕然とした。

「こ、こいつ………!?」

 そのディアトリマには…そこにあるべきはず片方の眼球がなかった。
 そこにあるのは肉が抉れ、一筋の傷痕を残す痛々しい横顔。

 隻眼(せきがん)―――まさかあの時、睦月さんに撃退されたディアトリマなのか…!?
 もしかして……オレ達を追ってここまで来たのか!

 片目を奪われた事による執念だとしたら……だとしたら、なんて執拗(しつよう)なやつだろうか。

「くっ……!」

 こうして改めて相対して実感する。
 その巨大な体躯(たいく)を前に、人間ではあまりにも無力。
 まともに戦おうとしたらとても敵わない、そう思わせるほどの埋められない“差”がオレと怪鳥の間にはあった。

 羽毛を膨らませて脅威を撒き散らす怪鳥は、変わらず与えてくる恐怖が全く薄れていない。

「こんのぉ、あっち行けよ!!」

 オレはその場に落ちている石を拾って投擲(とうてき)した。
 カァン、と嘴に当たると、硬質な音を立てるがそれはあまりにも貧弱な響きだった。

「(くっそがぁ……こんなもんじゃ効かねーか!?)」

 オレが投げつける石つぶては、あまりにも貧弱だ。
 睦月さんと比べれば、豪速球と豆鉄砲くらいの開きがある。

 こんなものじゃ撃退するはおろか、ディアトリマを怯ませる事すら出来ない。
 彼女がいれば……彼女が守ってくれれば……そう思わずにはいられない。


「おい、二人とも逃げろ!!」

 背後にいる二人にそう呼びかける。
 戦う力のない真理谷と大森さんでは、それ以外に選択肢はなかった。
 脅威を前にして逃亡。 それが出来なければ全員殺されてしまうという焦燥(しょうそう)に駆られる。

「…早く逃げっ……―――!?」

 脇見で二人を窺う。

 振り返って真理谷と大森さんと同じ方向に視線を向けた。
 そしてオレは……二人が目の当たりにしている同じ存在をこの目で見てしまった。


 ―――ロロロォ……。


 退路を塞ぐように、そいつは佇んでいた。
 オレ達の恐怖を塗り替えるような……そんな圧倒的な恐怖を携えた“(かいぶつ)”がそこに居た。


「なっ…!?」


 ―――絶望と怖れが背筋を舐め
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ