暁 〜小説投稿サイト〜
探し求めてエデンの檻
5-2話
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
レでも、飛行機が落ちるニュースも見たことがあるし、それで何百人も死んだというニュースだって見たことある。

 だがそれは……しょせんは対岸の火事としか見ていない。
 自分が見知った人が既に死んでいるなど、到底認められる事じゃなかった。

「ば…馬鹿な事を言うなよ」
「仙石…」
「うっせぇよ!!! もう聞きたくねえ!」

 それ以上真理谷の言葉を喋らせないように、オレは声を荒げる。
 絶対に、そんな事はない…と真理谷にではなく、自分自身にその可能性を必死に頭から追い出す。

「戻るぞ真理谷……探索を続けなきゃ! 大森さんも心配だしな!」


 真理谷はそれ以上何も言わなかった。


―――。


 苛立ち紛れに足音を鳴らしながら休憩場所に戻ると、プティロドゥスと戯れる大森さんの姿があった。

「チチ……」

 大森さんは猫を相手するかのように舌を鳴らして、指で突っついたりする。
 プティロドゥスも差し出された指を掴んだりして、見ていて和む光景だった。

 まるでペットと遊ぶ子供みたいだ…。

 言えねえよな……
 あの姿を見ていて、真理谷に聞かされた話を、彼女に言うべきじゃないと思った。
 それでも立ち止まるわけにもいかなかった。

「おいっ、もう十分に休んだだろ。 そろそろ行こうぜ」
「あ…はいっ……」

 声をかけられてようやくオレ達に気付いた。
 彼女を交えて捜索を再開する。


 ―――その時だった。

「―――っ」

 プティロドゥスがピクリと反応して顔が上がる。
 そこから次の瞬間は速かった。

 突然、大森さんの腕からプティロドゥスが離れたのだ。

「あ……ま、待って!?」

 大森さんは呼び止めるも、プティロドゥスは止まってはくれなかった。
 それなりに可愛がっていた彼女は、いきなりの離別に戸惑って懇願(こんがん)した。

 だが、小柄な小動物はその懇願(こんがん)を振り払い、俊敏(しゅんびん)な動きで垂直の木肌を駆け登り、枝から枝へと飛び移って大森さんの元から去っていった。

 ―――まるで“この場”から奔っていくように。

「どうして……」




 ―――…ーーーイ!



 ふと、耳は遠くで声を拾った。
 ほんのわずかだが、森の葉鳴りとも小動物のざわめきとも違う音調にオレは訝しんだ。


 ―――オォーーーーイ!!


「(こ、この声は……!?)」


 聞き覚えのある単調な呼びかけ。
 人の声に似ているソレは、意味が篭められていない悪夢の呼びかけだった。

 オレのみならず、真理谷や大森さんもその声に恐怖思い出させられた。

「お、おい…仙石……こ、これは…」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ