5-2話
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、ガツッと木肌を削っている途中でCAが話しかけてきた。
「何、スチュワーデスさん?」
「あ、大森です。 大森夏奈子」
大森さんか、そう言えばお互いちゃんと自己紹介していなかったな。
CAと呼ぶのも、スチュワーデスと呼ぶのも長ったらしいから、名前を教えてもらったのはちょうどよかった。
「ああ、今更だけどオレは仙石アキラな。 んで大森さん、何かな?」
「気になっていたんですけど、時々木に印を付けていますよね? 矢印のように見えますけど、何か意味あるんですか?」
オレがやっていたのは、楔型のマークを木に付けていた事だった。
朝から人を探しつつも、こうして途中で立ち止まっては繰り返し“目印”を刻んでいた。
チラリ、と真理谷を見る。
うまく説明できそうなヤツはあの通りの様だ。
「ああ、目印だよ。 オレ達がここに通った、って事を教えるためにな」
「教えるため、ですか?」
「こうして目印を付けておけばオレ達が通った道でも迷わないし、オレ達以外に誰かが見つければその矢印を追って合流する。 真理谷の受け売りだけどな」
「ああ、なるほど! それでですか」
感心したように彼女はポン、と手を打つ。
「それに、こうすればもしかしたら“あの人”にも出会えるかもしれない、って事もあるけど」
「天信さん……ですか」
大森さんは顔を俯かせて思い出すように意気を潜めた。
共通して思い出すのは、風のように助けて、世話になって、そして風のように去っていった“天信睦月”という女性。
その振る舞いは自分勝手のようで自由だったけど、我意の強いスタンスが強く印象に残っている。
泣きじゃくって色々迷惑をかけた大森さんとしては心残りがあるはずだろう。
ろくに謝る事も出来なければ礼を言う事すら出来ないまま、彼女は立ち去っていったのだから。
「そのリス…ずっとくっついているな」
オレは睦月さんの置き土産である小動物に話題に出した。
大森さんの腕にはリスのような小さな体に、サルのように長い尾をさせた生き物がいまだに大森さんに付いて離れていなかった。
それは昨日大森さんを泣き止ませるために、天信睦月が招き寄せたリス、プティロドゥスだ。
そのプティロドゥスは躾けているはずがない野生動物なのに、すっかり大森さんに懐いていていた。
愛嬌があって可愛いし、ちょっとしたマスコットだ。
不思議な事だが、気が弱そうな大森さんを慰める事に貢献してくれている。
「そうですね…まるで私の言葉がわかってくれるかのように、接してくれますし」
そう、そこも不思議な所だった。
このプティロドゥスは、話しかければ顔を向け
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