第十二話 来てくれた人その十四
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「こちらの神々とも」
「神様達?」
「はい、そうです」
「何か本当に巫女さんなんですか?」
里香は聡美のその言葉からこう考えた。
「銀月さんは」
「あっ、それは」
聡美はここでまた己の失言に気付いた。それで慌てて自身の言葉を否定したのである。
「そうした気がするだけでして」
「そうなんですか」
「はい、特に」
聡美は五人に気付かれない様にして言い繕った。
「特別なものはないです」
「いや、充分特別ですよ」
ここでこう聡美に言ったのは景子だった。
「神様の声が聞こえるって」
「そんな気がするだけです」
「凄いことですよ。私はとても」
「あの、それは」
「聞こえないです」
こう聡美に言うのである。
「そんなのはとても」
「いえ、ですから」
聡美は言い繕いを続ける。
「気がするだけで」
「そうなんですか」
「私は巫女でもシスターでもないです」
キリスト教のだというのだ。
「家にイコンもないですから」
「イコン?」
「キリスト教、正教の系にある宗教画よ」
イコンと聞いていぶかしむ琴乃に里香が話す。
「十字架みたいなものでね」
「そういうのがあるの」
「聖人を描いたものなの」
「それを家に飾り信仰の対象とします」
聡美もそのイコンについて話す。
「私の家にはないです」
「そうですか」
「私は基本的に宗教とは無縁です」
こう隠して五人に言う。
「キリスト教とも仏教とも」
「神道とはどうなんですか?」
景子は聡美の言葉を受けたうえであらためて問うた。
「そちらは」
「はい、話はついていますので」
「話は?」
「そうです」
こう景子に言う聡美だった。
「縁があります」
「そうですか。それじゃあそのことですが」
「流鏑馬ですね」
「お願いします」
景子の今の口調は切実なものだった。
「本当に」
「わかりました。それでは」
「乗馬も弓矢もお任せ下さい」
そのどちらもだというのだ。
「やらせてもらいます」
「ではそれで」
「それと日本の神社ですが」
聡美は自分からこの話題に変えてきた。
「本当に独特ですね」
「そうですね。確かに」
「日本文化独自のものがここにありますね」
「日本文化を担うものの一つですから」
宗教は文化を形成している重要なものの一つだ。キリスト教が特に顕著な例であると言っていいだろうか。
「それでだと思います」
「そうですか。ギリシアと同じですね」
「それはその通りです。ですが」
「ですが?」
「今のギリシアはキリスト教に支配されていて」
それでだと。聡美は少し残念そうに述べる。
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