第九話 春の鍋その十二
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「本当の意味でね」
「天才だからなのね」
「そう。あそこまで名作を作曲できて」
「町を栄えさせられたのね」
「そうよ。他にはロッシーニもそうしたけれど」
十九世紀イタリアの作曲家だ。パリに移りそれからはこの世に比類なき美食家となったことでも有名である。
「それでもね」
「それでもなのね」
「そう。まずはモーツァルトよ」
「音楽で町を栄えさせられたのは」
「まずはモーツァルトで」
「ロッシーニなのね」
「この二人に」
さらに言う里香だった。
「ワーグナーも」
「ああ、あの人ね」
景子がワーグナーと聞いて述べた。
「ニーベルングの指輪だったわね」
「そうでしょ。それこそかなりね」
「長いわよね、確か指輪よね」
「十五時間よね」
「ええ。四日かけて上演されて」
四部作で合わせた上演時間がそれだけかかるのだ。オペラはおろか音楽史にその名前を残る永遠の大作だ。
「聴くだけでもかなりのものらしいわ」
「十五時間だからね」
「しかも四日だから」
とにかく長い。とてつもない大作だ。
そしてその大作を完成させた彼がどの町を栄えさせたかというと。
「それでドイツにバイロイトっていう町があるけれど」
「バイロイト?」
「ドイツの丁度真ん中位になって」
地理的にそこにある町だ。普通ならおそらくドイツ人以外には然程その名を知られることもなかった町である。
だがワーグナーがそこに彼の作品だけを上演する歌劇場を築かせそれからこの町の歴史は大きく変わったのだ。どう変わったかというと。
「毎年ワーグナーの作品を上演してね」
「毎年なのね」
「その度に人が集まって」
誰もがワーグナーの曲を聴く為に集まることは言うまでもない。
「凄いことになるのよ」
「ううん、それでなの」
「ワーグナーもバイロイトを栄えさせたの」
一つの町をそうさせたというのだ。
「それでビートルズもね」
「モーツァルトやワーグナーみたいに」
「そう。リバプールを有名にしてね」
ビートルズとファン達の聖地にしたというのだ。
「まさにそうしたのよ」
「それだけ凄いグループだから」
「今もロンドンにコーナーがあるのよ」
「ちょっとやそっとじゃないわよね」
「伝説よ、本当に」
里香も手放しといった感じで話す。
「ビートルズはね」
「そうよね。やっぱりそれってね」
景子も考える顔で応える。
「ちょっとやそっとじゃないから」
「日本でそうした歌手やグループは」
「いないわよね」
「多分ね」
里香もこう景子に返す。
「いないと思うわ。昔のバンドでいうとチェッカーズがあったけれど」
「あの七人組のグループよね」
「そう。あのグループは久留米だけれど」
福岡県久留米市だ。尚この町には陸
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