第九話 春の鍋その九
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「イギリスの。本場のはね」
「どんな味だったの?」
「スコーンの焼き方もまずかったし」
まずは上段のそれが駄目だった。
「傍にあったクリームもね」
「それもなの」
「日本のが懐かしくなる味で」
それも駄目だった。
「中段のサンドイッチも」
「確かサンドイッチってイギリスから出た食べ物よね」
「それでもなの。パンの生地がそもそも駄目で」
具を包むのはパンだ。そのパンが駄目ならばサンドイッチの味はそれだけでどうしようもなくなってしまうのだ。
「中の具も味付けがもう」
「もう、でわかるのが」
「ある意味凄いわね」
「最後のケーキも日本の方がずっとよかったから」
「というかイギリス人って一体」
「美味しいものあるのかよ」
四人共その時点で疑問に思えてきた。里香はとにかくイギリス料理については何一つ肯定するところはなかった。
だが同時に他のことについてはこう話した。
「あっ、ロンドンの町並みはいいわよ」
「それはなの」
「町は奇麗なの」
「そう。見事っていうか」
霧の都の景観には定評がある。シェークスピアから産業革命、そして今に至るまでの歴史もそこにはある。
「それはいいのよ」
「幾ら食べ物が悪くても」
「そう。そこはまた行きたいって思える位よ」
「じゃあ一度私も」
ここで琴乃は雑炊をお代わりしながら述べた。
「行ってみたいな、ロンドンに」
「海外旅行ってお金かかるだろ」
「だから一人じゃ無理だけれどね」
琴乃は美優にこうも返す。
「それでもね」
「一度行ってみたいんだな」
「機会があればね」
「だよな。音楽もあるしな」
「ロックの発祥だし」
イギリスは音楽の歴史もある。世界帝国の文化は料理ではなくこうした方面に存分に発揮されているのかも知れない。
「ヘビメタにパンクも」
「っていうかイギリス音楽多いな」
「そうよね。考えてみたら」
「だよな」
「だから一度ね」
琴乃はまた言う。
「行ってみたいかなって」
「トータルで見ていい国よ」
里香はこう琴乃に話す。
「というかお料理以外は」
「いいのね」
「本当に一回行ったら」
「忘れられないのね」
「いい思い出になるから」
里香はにこやかな顔で琴乃に話す。
「本当に機会があればね」
「行ってみるといいのね」
「しかも私達軽音楽部だから」
部活の話にもなる。
「こうしたことは余計にね」
「そうね。いいわよね」
「そう。本当に機会があれば」
何処かに行くのも縁だ。つまり機会があれば行けるがそれがなければどんな場所でも行くことができないのだ。
それで里香はここではこう琴乃に話すのだ。
「行ってみたらいいから」
「そうなのね」
「ただし本当に食べ物は酷いから」
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