第九話 春の鍋その八
[8]前話 [2]次話
「ゆで卵に八丁味噌って」
「実際に美味しいのよ、これが」
「そうなのね」
「勿論他のお料理もいいわよ」
味噌だけではないのが名古屋だ。他の料理もいいのだ。
「鶏肉に」
「あっ、この鶏は奈良のだからさ」
美優が笑ってこの鍋に使った鶏肉の話をする。
「名古屋じゃないから」
「ええ、味が違うからわかったわ」
「だよな。まあそれで他にもだよな」
「天むすにきし麺にういろうにね」
「名古屋も美味いもの多いよな」
「ひつまぶしもあるし」
大阪や神戸にも負けていない、名古屋もまた食の都だ。
ただその天むすについて里香はこんなことを言った。
「ただイギリスの天むすって」
「凄そうね、それ」
イギリスと聞いてすかさず言ったのは彩夏だった。
「イギリスって」
「予想つく?」
「大体はね」
「天握りって聞いたけれど」
元々は寿司だったというのだ。間違ってもお握りではない。
「それがどう見てもね」
「天むすだったのね」
「そうだったのよ。それで味もね」
「酷かったの?」
「ちょっと」
里香は暗い顔で首を横に振る。
「日本人にはね」
「合わないのね」
「味がないだけじゃなくて」
それだけでもかなりのことだがさらに加わるのがイギリスだ。
「揚げ加減もね」
「駄目なのね」
「フィッシュアンドチップスってあるけれど」
イギリスの名物料理ではある。
「あれも食べたけれど」
「まずいの?」
琴乃はかなり率直に問うた。
「やっぱり」
「一口食べて私もお父さんもお母さんも」
そのフィッシュアンドチップスを家族で食べたというのだ。それだけにその感想はかなり恐ろしいものだった。
「勿論お兄ちゃんとお姉ちゃんも食べたけれど」
「皆なのね」
「酷い味だったわ」
つまりまずかったというのだ。
「もう二度と食べたくない位に」
「ううん、そこまでって」
「イギリス人って一体」
「世界帝国だったのに何で?」
「何でそこまでまずいんだよ」
「昔から食べ物にはこだわらない国らしいの」
里香はイギリス料理のことを聞いて首を捻る四人に対してあらためて話した。
「それでらしいの」
「いや、こだわらないっていって」
「ちょっとそれは」
「名物料理もまずいって」
「駄目過ぎるだろ」
「あっ、勿論ね」
ここで里香は琴乃を見て言った。
「ティーセットもね」
「それもなの」
「琴乃ちゃんが作ってくれた方がね」
「美味しかったのね」
「ずっとね」
「あれ外見酷かったと思うけれど」
「美味しかったわよ」
里香はその方を重要視していた。料理は味だというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ