第九話 春の鍋その四
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その横には糸こんにゃくに葱、豆腐、白菜、えのき、しらたき、しいたけ、そして鶏肉がある。その組み合わせはというと。
「水炊きよね」
「それにしたの」
「ああ、茸を多くしてさ」
それで用意したものだというのだ。
「どうだよ。いいだろ」
「確かにね」
彩夏もこれはという顔で頷く。
「私の作った羊のよりもずっと」
「いや、それは違うだろ」
美優は彩夏の今の言葉にはすぐにこう返した。
「彩夏ちゃんのあれもよかったぜ」
「けれどこれは」
「焼肉は焼肉、鍋は鍋だろ」
「違うの?」
「そうだよ。それぞれの味があるからさ」
料理として全く違うので同じ物差しでは計れないというのだ。
「また違うだろ」
「ううん、そうなのね」
「そうだよ。あとさ」
「あとって?」
「菊菜もあるからさ」
緑系統もちゃんとあった。
「お肉も野菜もたっぷりあるからさ」
「栄養のバランスも考えてなのね」
「そうだよ。お料理ってやっぱりな」
「美味しくて身体によくて安くて、よね」
「お野菜は結構安く手に入るしさ」
見れば野菜の量はかなりだ。しかも鶏肉の量もだ。
「これな。鶏肉もな」
「欠かせないわよね」
「お魚か鶏肉か」
「鱈も考えたんだよ」
やはり鍋の定番である。
「けれど今一つ季節じゃないからさ」
「それで鶏肉ね」
「それにしたのね」
「ああ、そうなんだよ」
美優は笑顔で話す。
「鍋だとその点合格だろ」
「うん、確かにね」
「お鍋って美味しいし栄養のバランスいいし」
「しかも安くつく」
「たっぷり食べられるし」
「あたし結構鍋好きでさ」
美優は楽しげに笑って自分の料理の好みも話す。
「すき焼きとか鍋焼きうどんも好きだしさ」
「すき焼きも最近安いわよね」
すき焼きと聞いて和食好きの景子がこう言う。
「漢人の牛肉が凄く安く手に入る様になったから」
「そのオーストラリアの輸入肉よね」
「そうそう、それそれ」
景子は笑顔でまさにそれだと琴乃に話す。
「輸入肉は庶民の親友よ」
「牛肉が安く手に入るのって大きいわよね」
「お父さんによく言われるの」
景子は自分の父の話も出した。
「昔は牛肉は自由化されてなくて高くて」
「そのお肉が入って来ないから」
「それで高かったのよ」
そうなるのも道理だ。ものはなければ高くなる、資本主義の摂理である。
だが大量に入ればどうなるかも資本主義の摂理だ。それは牛肉も例外ではなくそれでだったのである。
「けれど。自由化の後はね」
「沢山入る様になったから」
「安くなったのよ、凄く」
「硬いって言われるけれどね」
琴乃は輸入肉の硬さについても言及した。
「よくね」
「そうね。けれどね」
「それでもよね」
「そう。牛
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