第九話 春の鍋その一
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第九話 春の鍋
「景子ちゃんも頑張ったね」
「そうかしら」
彩夏、景子と進んで五日目の五人揃っての登校中に景子は里香に言われて応えた。今日も五人横に並んで歩いている。
その中で里香は景子にこう言ったのだ。
「うん、和食以外だったじゃない」
「あれね。実際ね」
「勇気いったの?」
「私お料理にはね」
景子はこう言う。
「お醤油を使わないと」
「不安になるの?」
「そうなの。牛肉を使ってもね」
「お醤油なのね」
「肉じゃがでもね」
確かに肉じゃがは肉を使う。だがそれでもだった。
「お醤油、それに味醂使うわよねえ」
「絶対にね」
「すき焼きもそうだし」
これも醤油を使う。それも多量に。
「そういうのだと大丈夫だけど」
「お醤油を束わないと」
「不安だったわ」
醤油を使わない料理を作る、そのこと自体がそうだったというのだ。
「最後まで作られるかどうかね」
「そうだったのね」
「カレーだったけれどね」
景子が作ったのはカレーだった。それを皆に食べてもらったのだ。
「そのカレーにしても」
「作るのはじめてだったの」
「学校の授業では作ったわ」
家庭科で、である。
「とはいっても一人じゃなかったから」
「皆で作ったのね」
「ええ、そうだったの」
だからだというのだ。
「本当に。一人で和食以外作るのって」
「不安だったのね」
「食材買ってお肉やお野菜切って」
そしてだった。
「煮る時もね」
「本当に出来るかどうか」
「不思議よね。お醤油とか味醂とかだしを使わないだけで」
景子はこのことは笑って言う。
「お料理なのは変わらないのにね」
「不安だったのね」
「本当に出来るかどうか」
「美味しいかどうかね」
その料理が果たして本当に成功するかどうか、そうだったというのだ。
「不安だったわ。けれど」
「できたわね」
「味、どうだった?私のビーフカレー」
「ええ、よかったわ」94
里香が四人を代表して笑顔で答える。
「美味しかったわ」
「そう。よかったわ」
「味がしっかりとしてて」
里香はその笑顔で景子に話す。
「お肉もお野菜も柔らかくて」
「それでなのね」
「ええ、よかったわ」
そうだったというのだ。
「だから何杯でも食べられたのよ」
「そう。だったらよかったわ」
「ええ。けれどビーフカレーにしたのね」
「それが一番いいかなって思って」
皆で食べるならというのだ。
「オーソドックスだから」
「カレーの中ではね」
「そう。チキンカレーもいいかなって思ったけれど」
「牛肉にしたのね」
「少し迷ったけれどね」
だがそれでもビーフカレーにしたというのだ。
「そっ
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