第八話 それぞれの家でその八
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「ないわ」
「でしょ?やっぱり石油があるのは」
「大きいのね」
「そう、だから絨毯もなのよ」
そうなるというのだ。
「凄い高価なのがあっちにはあるのよ」
「ううん、そうなの」
「お父さんあっちには行かないのよ」
仕事では、だった。
「アラビア湾の辺りは」
「何でなの?」
「危ないからってね。会社の方針で」
それでだとだ。彩夏は琴乃に話した。
「そうなってるみたいよ」
「あっ、そういえばあの辺りって」
「イラクとかイランとかね」
危険とされる国家にはこと欠かない。もっともイラクは今はフセイン政権がなくなり少なくとも侵略の危険性はなくなった。深刻な内乱状態であるから危険ではある。
「そういう国があるから」
「それでなのね」
「そう。クウェートとかも」
こうした安全とされる国々もだというのだ。
「普通に巻き込まれるじゃない」
「そういえばクウェートって」
ここで里香が言う。
「あの国って昔イラクに攻められたわよね」
「イラクってサウジアラビアに攻め込もうとも考えてたから」
これは実際に考えていたと言われている。
「だから。巻き込まれたら駄目って」
「会社の方針で決まってるからなの」
「それでトルコとかエジプトなの」
「石油とはあまり縁がないけれどね」
これは両国共だ。尚イラクもサウジアラビアもあの辺りの国々は全てかつてはオスマン=トルコの領土だった。
「それでも普通にビジネスとして成り立つから」
「彩夏ちゃんのお父さんも行ってるのね」
「そう。それでなのよ」
彩夏は琴乃と話をしながら今度は部屋の中に置かれているチューリップ、鉢の中にあるそれを四人に見せた。見事な赤いチューリップである。
「これもなのよ」
「チューリップ?」
「それも?」
「そう、これもなの」
あちらの人から貰ったものだというのだ。
「このお花もね」
「お花もって」
「このお花トルコの人から貰ったものなのよ」
「あれっ、確か」
琴乃はそのチューリップを見ているうちにあることに気付いた。その気付いたことは何かというと。
「チューリップってオランダの国花よね」
「ええ、そうよ」
里香がすぐに琴乃のその問いに答える。
「チューリップはね」
「そうよね。オランダのお花よね」
「けれどね」
「それでもなの」
「トルコの国花でもあるのよ」
「そうだったの」
「そう。トルコ人って昔からチューリップが好きで」
それでだというのだ。
「トルコの国花にもなってるのよ」
「ふうん、そうだったの」
「日本で言うと桜よ」
日本の国花というとやはりこれだった。
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