第八話 それぞれの家でその一
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第八話 それぞれの家で
「御免ね、昨日は」
ゴールデンウィーク三日目の部活の時にだ。里香は体力練成の運動の後のストレッチをしながらメンバーに言った。
アキレス腱を伸ばしている。そうしながら言ったのだ。
「私のお料理って」
「あの肉じゃが?」
「あれのこと?」
「それとお素麺とね」
「その二つのことよね」
「うん、味付けだけれど」
里香が言うのはこれのことだった。
「薄かったわよね」
「いえ、別に」
「そうは思わなかったけれど」
「特にな」
「そうよね」
四人は顔を見合わせて言う。その味はだというのだ。
「そこまで言う位薄くないけれど」
「むしろ丁度いいっていう位じゃないの?」
「そうだよ。気にする位じゃないよ」
「全然ね」
「だといいけれどね」
里香はあまり自信のない感じで返す。
「問題なかったら」
「というかな」
美優がそのストレッチをしながら言う。身体を動かした後のこれは欠かせないことだった。無論運動の前もだ。
「気にし過ぎじゃねえの?」
「そうなのかしら」
「まあ。里香ちゃん今度は意識してだよな」
「うん、味付けしたから」
薄くならない様にしたというのだ。味付けを。
「お醤油とかの量。三割、いえ四割位増やしてね」
「四割か」
「そう、その位にしたの」
そうして味付けをしたというのだ。
「肉じゃがはね」
「それでお素麺は」
「そのまま」
普通に茹でて市販の素麺のつゆで食べてだというのだ。
「そうしたの」
「成程な。やっぱりな」
「あれでよかったのね」
「お素麺は茹で加減だからな」
それさえよければ何の問題もないというのだ。
「それができていたからさ」98
「よかったのね」
「そう思うよ。それでな」
「肉じゃがよね」
「四割か」
「そう、四割だったの」
醤油を増やしたというのだ。そして増やしたのは醤油以外の調味料も然りだった。
「みりんにお塩もね」
「それもだよな」
「いつもの四割ね」
それだけ増やしたというのだ。
「そうして作ったの」
「成程な」
「あれでよかったのね」
少し首を捻って言う里香だった。
「四割で」
「多分な、里香ちゃんってな」
「私は?」
「ああ、素材活かして作る方なんだよ」
それが里香の料理の作り方だというのだ。
「だから薄いんだよ」
「それでなの」
「あと。子供の頃に濃い味だとどうとか言われたと思うけれどな」
「うん、実はね」
その通りだと里香も美優に答える。
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